環境保全とコミュニティ形成 

永石 文明

環境保全とコミュニティ形成の
フィールドワーク中にて

 授業は、都市河川や里山を巡るものです。授業の目標は質的フィールドワークを通して、どのような背景や課題があり、その課題解決に向けて地域の人々はどのように取り組んできたのかを探ります。「質的」とフィールドワークの頭に付けたのは、実際に現地で活動する人の話を聞きながら、そこに暮らす生きものの実態を知り、地域の環境課題と自然の恵みを理解していこうとするものです。一つの景観が、歴史をもった景観へと変わることを期待しています。質的フィールドワークは、そうした生きた学びの場と考えています。最終日は大学の教室で行います。振り返り後、皆さんが主体として進めるワークショップ形式での共同作業をとっています。そこではフィールドワークで得た知見をもとに、カテゴリー抽出と理論的枠組みづくりを行います。

 皆さんに贈りたい私の座右の銘は、「現場での探索と人との出会いは最良の師」です。これは、ある環境において、ただ歩くだけでは何も生まれず、課題の発見や将来の在り方も見えてこないのではないかと思います。最も深く、そして長く記憶に残る学びは、実際にその現場で探索して自然を理解し、現地の人へのヒアリングを通して得られると思います。

 皆さんが知的好奇心のアンテナを張り巡らせ、目の前にある水や生きもの、人々の暮らしの中に、「なぜだろう」「どうなっているのだろう」という問いを立てた質的フィールドワーク。自分で発見し、理論的枠組みを作りあげる経験は、皆さんが今後、地域のどんな環境課題に出会っても、解決する力になると思います。フィールドワークでは、安全第一で、そして何よりも、発見の喜びを心ゆくまで楽しむことが大事です。授業の様子を振り返ると、皆さんが川や森の中に入り、目を輝かせて水や樹木、生きものなどを観察する姿が、最高の思い出です。

この記事の投稿者

編集チーム 十七期生