ウイメンズクラブ 9月定例会報告
1活動日 2016年9月15日(木)11時半~13時半
2場 所 セントポールズ会館「すずかけ」
3出席者 10名
4テーマ 「日本画家堀文子さんの生き方に学ぶ」
ウイメンズクラブでは、10月に箱根の成川美術館の企画展「山本丘人と堀文子 革新と信念」を鑑賞するに際し、9月の定例会は堀文子さんの著書等を読んでの事前勉強会とし、ランチを取りながら、それぞれに感じたことを自由に発言し合った。
大磯に居を構え世俗に抗しながら「群れない、慣れない、頼らない」という信念のもと常に新しいことに挑戦されている堀文子さん、今年7月98歳になられたが、欧米やメキシコ、イタリアトスカーナで生活したり、ヒマラヤ、アマゾン奥地などへも出かけ、また近年では虫や微生物の世界など、画壇には属さず、今なお好奇心旺盛で次々に新しい世界を描いておられる。
<発言内容>
- 戦前の山の手に生まれ、西洋史学者の父と進歩的な考えの母の下に育ったので、当時の女性にはなかなか選ぶことができない自分流の生き方ができたのではないか?
- 地位や名声、金銭に頓着なくただひたすら絵を描くことに邁進した人生は潔く見事としか言いようが無い。
- 「一所不住」という堀さんのモットーに感銘を受けた。
⇒慣れてくると物を見なくなる、見えなくなる。家も変えた方が良い。野生動物は、巣を知られると危険だから、絶えず巣を変える。庭の自然も自力で生きている。どんな雑草でも自分の力で死ぬまで生きている。それらを見ることが、堀さんの刺激となっているようだ。 - 伐採の危機にあったホルトの木の命を思い、全財産を投げ打って大磯のその木のある土地ごと購入してしまった堀さん、生命に対する強い思いと瞬時の決断力に圧倒された。
- 科学者を希望したが、女性は大学に入れなかったので、美術を選んだ。あの時代は何をやっても戦争に利用されるが、美術だけは人殺しの役にたたないので敢えて選んだ。未曾有の就職難で東大農学部(作物の記録係)で麦や作物の絵などを描き自然を見る眼を養う基礎に。絵筆や絵の具が買えないので不本意ながら時局に合うものも描いた。当時の女性たちが自分の人生を自ら選べないなか、堀さんは試行錯誤しながら何とか乗り切ったようだ。
- 軍に捕まらないための知恵を働かせた。男は戦争に駆り出されるので、文化を伝えるのは女性だと思ったそうだ。兄二人が戦死と病死、本の装丁と挿絵で一家を支えた。“死ななくてもいい”という時代が来て、本当に嬉しかったと述懐されている。
- 関東大震災、満州事変、26事件、戦争という歴史的な事件を経験し、98歳の今も“人の命で戦ってはいけない”と発信し続けている。この堀さんのメッセージに次の時代を生きる私たちの責任は重い。
- 死線をさまようような大病にも遭遇したが、「年を意識して生きてきたことがない。毎日、つんのめるようにして生きている」との98歳の堀さんの言葉に、これからの人生をもっと好奇心を持って生きていきたいと改めて思った。
最後に会員の一人がipadを取り出し、「実はホルトの木に会いに一人で大磯に行ってきました!」と大磯の堀文子さんのお住まいや空覆う大木に育ったホルトの木の写真を見せてくれた。資料を読むだけではなく、堀文子さんの原点とも言える場所に赴いた会員の熱心な行動に皆で拍手!自由闊達に意見交換ができた研究会でした。
『ホルト木の下で』(幻戯書房)堀文子(著) 2009.6
『対談集 ―堀文子 粋人に会う―』(清流出版)堀文子(著) 2009.11
『堀文子の言葉 ひとりで生きる 』「生きる言葉」シリーズ(求龍堂)堀文子(著) 2010.2
『老いて、若返る 人生、90歳からが面白い』(小学館)日野原重明共著 2011.4
『私流に現在(いま)を生きる』(中央公論社) 堀文子 (著) 2015.10.
『極上の流転』 堀文子への旅 (中公文庫) 村松友視 (著) 2013.8
『虹の橋を渡りたい---画家 堀文子97歳の挑戦』(幻戯書房) 中田整一(著)2016.1
<画文集>
『堀文子写生集』 (マリア書房) 1970 (アート出版)1976
『みち』 (至光社) 1972
『トスカーナの花野』(JTB日本交通公社出版事業局 1991.7
『命の軌跡 堀文子画文集』 (ウインズ出版) 2003.4
『生きて死ぬ智慧』 柳澤桂子共著 (小学館) 2004.10
『堀文子画文集1999〜2009 』(JTBパブリッシング) 2009.12
『名もなきものの力 命といふもの』第3集(小学館 サライ・ブックス 2012.4月 他多数
<映像>
堀 文子『シリーズ、私の戦後70年・今、あの日々を思う』(NHKEテレ「こころの時代」2015年10月11日)
(記:小杉)
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