好みのお酒は日本酒。それは私の生まれ育った地に玉川上水の豊かな水をひく酒蔵があり、日本酒が町の文化となっていた事が影響しています。「さしつさされつ」の飲み方が相手との一体感を醸し出す日本酒ですが、銘柄や地域などよく知らないままに過ぎていました。「伏見の歴史と酒造り」と題したオンライン講義のお知らせが舞い込んだのは、2026の年明け、新酒仕込みの時期でした。日本酒のことをもう少し知りたくて申込みをしました。

この講座では、事前に伏見の歴史を学ぶ動画を視聴した後、オンライン講義当日に合わせて「利き酒セット」が送られてきました。スパークリング、純米大吟醸、純米吟醸、本醸造、純米酒の5種のラインナップです。

「利き酒は、最後のお楽しみにして、先ずは伏見の歴史を振り返りましょう」と酒造のお嬢さんである大学教授が着物姿で画面の向こうから話しかけます。教授の弟さんが12代当主の会長、その息子が13代目社長というファミリー感満載の伏見の酒造は、幕末の薩摩九烈士の寺田屋事件にも遭遇したとの口伝を持つ酒蔵です。

京都市南部に位置する伏見は、桂川、木津川、宇治川が集流する巨椋池(おぐらいけ)を湛えた風光明媚な景勝地であったいう事です。良質な湧き水は酒造りと結びつきました。秀吉により伏見城が築城され、同時期に大規模な治水工事が施政されたことで水運の要所となりました。1877年神戸-京都間の東海道線が開通、1899年東京まで延伸すると、その交通網を優位として伏見は灘に次ぐ二大酒処に発展しました。こうして伏見の酒は現在も都道府県別日本酒出荷量2位(京都府の大半が伏見区)を担っています。

動画で見る新酒仕込みの工程は、杜氏の勘と経験値がデータ化され、衛生管理が徹底した工場内での製造を映し出していました。2024年にユネスコ無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」は、古来よりの技術の継承の上に成り立つ科学的な品質管理に支えられていることを実感します。

日本酒の消費量が右肩下がりの背景に加えて、昨今の酒米の値上がりは、経営に深刻な影を落とす要因となっているようでした。しかしながら原料に妥協せず、軟水と相性の良い京都産の米にこだわった純米大吟醸は、華やかな香りに包まれた芳醇な味わいの逸品となっていました。

「いろいろな酒器で味わってみましょう」「確かに、この薄い器だと味が違う!」と画面の向こうでクイクイ杯を空ける様子も酒造りの血筋がなせる技、思わずつられます。スパークリングは、シャンパンと同じ瓶内二次発酵の工法で、きめ細かい泡が一筋の線となってグラスの底から立ち上がりました。

京都産の酒米「祝」(いわい)に特にこだわった純米吟醸は、柔らかな甘さに淡麗な味わいを含む香り豊かな仕上がりです。吟醸酒は冷やして、醸造酒はお燗して、スパークリングは細長いグラスで、と指示のままに飲んでいると、利き酒はいつの間にかほろ酔い以上の酔い加減。Zoomのフレームを超える一体感も日本酒効果と言えるのでしょうか。

酒造りを味わう講義は4時間に及び、ここが我が家で良かった、と思うほどにお酒に充たされた空間となりました。豊かな水と酒造りの歴史を持つ京都伏見、次は実際に訪ねてみたいと願う春の日です。(7期生 吉岡)

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