2026年3月に退任を迎えられる上田恵介先生、野田研一先生、箕口雅博先生の三名によるシンポジウム「『心』にとって自然とはなにか」が、2月21日15時より立教大学14号館にて開催されました。
本シンポジウムには「自然環境と人間の関係(つながり)について考える」というサブタイトルが付けられ、心理学、文学、動物行動学という異なる分野の視点を通して三名の先生方の長年の研究をもとに、「自然」と「心」の関係について多角的に語る大変興味深い講演会となりました。当日は、各先生による三講演に加え、最後にディスカッションも行われ、各先生方が互いの考えにコメントを交わしながら議論を深める時間となり、理解をより広げる機会となりました。

箕口雅博先生 「『心』にとって自然とはなにか」(アドラー心理学)
アドラー心理学とコミュニティ心理学の立場から、人と自然とのつながりを「共同体」という視点で捉え直されました。自然は単なる環境や資源ではなく、私たちが共に生きる仲間であり、自然との関係を取り戻すことは、人が孤立から抜け出し、より大きな生命のつながりの中に自分を位置づけ直していく過程であることが示されました。

野田研一先生 「自然環境を文学はどう描いてきたのか」(アメリカ文学)
文学の世界を通して、人間がどのように自然を感じ、語り、意味づけてきたのかを丁寧に紐解かれました。自然は風景として存在するだけではなく、人の記憶や感情を映し出す存在でもあります。歌や物語、日常の言葉の中に自然が繰り返し現れることからも、人間が自然との関係の中で自分自身を理解してきたことが伝わってきました。

上田恵介先生 「人間のうちの自然なるもの」(動物行動学)
動物行動学の視点から、人の心そのものが自然の中で育まれてきたものであることを示されました。自然に安らぎを感じたり、生き物に関心を抱いたりする感覚は偶然ではなく、人間に備わった本来的な性質であり、「自然を求める心」は私たちの中にあらかじめ備わっているものだというお話が印象的でした。

三つの講演を通して見えてきたのは、自然が私たちの外側にある特別な存在ではなく、心のあり方、文化の営み、そして生物としての人間の成り立ちにまで深く関わっているという共通した視点でした。それぞれ異なる学問分野から語られながらも、「人は自然との関係の中で生きている」という感覚が重なり合っていったように感じられます。
日常生活の中で、私たちは自然を意識する機会が少なくなっているかもしれません。しかし今回のシンポジウムは、自然とのつながりが特別な体験の中にあるのではなく、記憶や言葉、感情、そして身体の感覚の中にすでに息づいていることを思い出させてくれる時間となりました。
「心」にとって自然とは何か――その問いに明確な答えがあるわけではありません。それでも、本シンポジウムを通して、一人ひとりが自分自身の生活や経験の中で自然との関係を見つめ直し、考え続けていくことの大切さを感じる機会になったのではないでしょうか。

18時からは、立教大学第一食堂にて懇親会が開催されました。
シンポジウムとは違った和やかな雰囲気の中で、受講生たちと先生方が思い出話に花を咲かせ、和やかな交流の時間がゆったりと流れていきました。心温まるひとときとなりました。

シンポジウムにご来場、また懇親会にご出席いただいた皆様、ありがとうございました。


上田恵介ゼミ・野田ゼミ・あどらーカフェ 修了生・現役生有志一同(懇親会主催)

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編集チーム 十五期生