■はじめに
過日のこと、「私、ZOOM嫌いなのよね」と仲間に言われショックでした。『「都市の」正義が地方を壊す』の著者の仮説ですが、東日本では東京が最上位とする序列意識があります。ある地域には中心と周辺があります。拙稿は去年の8月の続編で周辺人の思いの表明です。
最初に5つの設問を提示します。実はこれらの回答に私はすべてYESなのです。
(1)自宅から立教(池袋)に行くのに特急利用で2時間15分、約3000円を要する。
(2)自宅から一番近いコンビニが5.5㌔、「鬼滅の刃」を観る映画館なら25㌔以上遠い。
(3)自宅の周囲150㍍以内にサル、シカ、イノシシ、ときにクマが迫った形跡がある。
(4)自宅に水道が供給されていない。(しかし自治会内の他の9戸は水道が普及している)
(5)所有する敷地や農地の維持管理(草刈りなど)に毎年5万円以上の出費を覚悟する。
一言で、我が家は東京都庁からほぼ真北に100㌔、海抜200㍍のポツンと一軒家です。



■多数派と少数派
日本列島の居住者は約1.23億人です。その住民は属性により色々な分類が可能です。一部の特権階級(少数派)が権力や富を支配する例はありますが、少数派は総じて弱者の立場に置かれるのではないでしょうか。
参院選前、テレビは連日「コメ不足」を報じていました。その多くは消費者(多数派)目線に映りました。
一方、コメ農家は人口の約1%、少数派です。少数派ながら勢力拡大中なのが在留外国人(国連の定義なら移民)ですが、人口の約3%です。「コメは買ったことがない。余るほどある」と正直に発言した政治家がいましたが、私もその一人です。コメは「縁故米」や株主優待で届くもので余ります。
■中山間地域のコメ農家
テレビでコメ論議を聞いて思ったことは、コメの生産者と言っても一律ではないことです。3分類がわかりやすいと感じます。①大規模農家で利益を出せる経営体・飼料米をつくり補助金をもらう農家、②水田を所有はするが他人に耕作依頼する経営体、そして③中山間地などの弱小零細な経営体です。我が家のある集落は③のタイプです。「耕地整理」が未完なので耕作を引き受ける人はいません。
集落は現在10戸編成ですがその7戸が昔はコメ農家でした。今では2戸のみで80歳と70歳の方です。水田を耕作する人がいるので周囲の景観が保たれています。2名が農業をやめると集落一帯の農地は雑草に占領されるでしょう。特に厄介なのがオオブタクサです。侵略性のきわめて強い植物で風媒花なので風で種が周囲に飛散します。
もう一つ大問題と思うことは、農村地域の崩壊です。ほとんどの家がコメをつくっていた時代は、春が来ると各戸から1名が出て水路を修復する「堀さらい」をしました。今はやりません。2010年、2015年、2019年、2024年と記録的短時間大雨が降り、我が家の隣を流れる1級河川が氾濫・越水し被害が出ました。こうした災害時に地域の連携が機能しません。いわゆる限界集落化です。
■おわりに
三菱総合研究所(MRI)の稲垣公雄氏の『令和の米騒動』(3)~(8)はおすすめです。例えば、ごはん1膳約57円が果たして高いのかという問いが載っています。縁あって私は3年前から「中山間地域フォーラム」の会員です。加えて2年前から「日本熊森協会」の会員にもなっています。
人は生まれる場所を選べません。居住地の選択の自由はあります。産業構造が変化しましたので、日常生活に田や畑が不要となればわざわざ中山間地域に住む必要はありません。若者が東京圏や県庁所在地に「向都」指向を抱くのは当然のことで合理的な選択と考えます。(7期生 津吹文男)
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