「セカンドステージ・デビュー」へのアプローチ

NPO法人グラウンドワーク三島 専務理事 渡辺 豊博

「清流が蘇った源兵衛川での保全活動」

私って何に?・私って誰れ?
 人生の後半に差し掛かった今の私の「齢」を考えると、一体、自分は何のために生きてきて、今後、何のために生きていくのか、不安に駆られる時があります。皆様も、今までと、これからの人生を考えた時に、反省と不安の思いが交錯し、落ち着かない気持ちになることがありませんか。
 実は、私は40歳の頃に、これからの人生の生き方や社会的な役割などについて、真剣に迷ったことがありました。「このまま静岡県庁で働き上司に適当に忖度し、死んだ振りでいい加減に仕事をして何の意味があるのだろうか?こんな中途半端な生き方を続けて、一体自分に何が残るのだろうか?社会的・公益的な諸活動を余りしていないが、地域に何か貢献できることがあるのか?県庁で行政マンとして出世街道を登り詰めて部長になったからといって何が残るのか?」などについて、明確な回答・方向性を見出せず、悶々とした生活を過ごしていました。

もう一人の自分発揮の夢舞台を開拓
 結果、導き出された自分の生き方・基本的な姿勢としては、公務員とNPOのふたつの舞台・土俵を持つことでした。当時のふるさと「水の都・三島」の姿は、湧水が減少し、川にはゴミが捨てられ、雑排水が垂れ流されて環境悪化が進行していました。
 「行政と政治は死んだ振り、市民は他人任せ、企業は営利追及」が要因となり、三島は汚れ醜い有様でした。それなら、自分の行政マンとしての専門性・技術力を、この荒れ果てた三島の環境再生活動で発揮し、行政とNPOの立場を便宜的・機動的に使い分けられる、もう一人の自分活躍の夢舞台を創り上げて、人としての生き方の多様性と実践を積み重ねてきました。
 この公務員とNPOとの「並行移動」の生き方は、双方とも責任ある仕事を成し遂げていかねばならず、大変な労力と時間を要し、資金確保や精神的負担、専門性の発揮、ネットワークの構築などの運営に苦労し、家族との円滑なつき合いを含めて困難を極めました。また、同士・仲間の質と問題意識にも大きな格差・乖離があることから、適合・一体化するための精神的な葛藤と試行錯誤のプロセスは辛く、大変でした。

右手にスコップ・左手に缶ビール
 しかし、課題を抱えた地域の現場での活動は楽しいものです。仲間が協働し、問題を共有し、汗を流し、知恵・アイデアを出し、課題を具体的に解決し、成果・実績を残していく。作業後は、宴席を設け、目線を同じくして愛郷心を熱く語り合う、まちづくりの夢・未来予想図を議論する。県庁では体験できない新鮮で清々しい、新たな自分発揮の舞台の連続でした。
 結果、汚れていた源兵衛川をホタルが乱舞する清流に再生、水質汚濁で消滅した水中花・三島梅花藻を復活、富士山でのし尿問題を解決したバイオトイレを設置、富士山の世界文化遺産登録への仕掛けなど、様々な革新的・創造的な取り組みを先導的に実現してきました。戦略的なアプローチと不断の努力・覚悟があれば、大いなる「夢」も現実化できます。

「セカンドステージ・デビュー」への期待
 「人は人のために生きてこそ人なり」です。一歩踏み出す勇気が、地域社会を動かし、心優しい「共助の社会」を創り上げていきます。地域のいろいろなNPOを訪ね、無理の無い範囲で活動に参加してみてください。
 そこで、今までの人生の経験知と胃力・肝力を駆使して闘いを挑んでいってください。苦労や我慢、困難は、元気の原動力です。皆様の活躍を期待しています。