国立西洋美術館

 7月17日にRSSCユネスコクラブは、ユネスコ世界遺産の一つである国立西洋美術館が開催する「建築ツアー」に10名で参加しました。国立西洋美術館はThe Architectural Work of Le Corbusier, an Outstanding Contribution to the Modern Movement(ル・コルビュジエの建築作品、近代建築運動への顕著な貢献)の一つとして、2016年に世界遺産に登録されました。国立西洋美術館は、隣国と海により隔てられた日本においては、唯一の国境を越える遺産【トランスバウンダリー・サイト (Trans-boundary Site)】です。

 World Heritage Listによると、「ル・コルビュジエの作品から選ばれた、この国境を越えた連続遺産を構成する17のサイトは7か国にまたがり、過去と決別した新しい建築言語の発明の証です。これらは、ル・コルビュジエが“忍耐強い研究”と表現した過程において、半世紀にわたって建設されました。」とあります。

モデュロール(ひじ掛け140cm 天井226cm)

 建築ツアーでは、美術館建設に至る経緯(立教学院でも学んだ松方幸次郎の松方コレクションの日本へ寄贈返還)、ル・コルビジェの建築および西洋美術館の特徴(モデュロール、近代建築の5原則、無限美術館)等の説明がありました。

 さらに前庭改修についての説明がされました。

 2016年に敷地全体がユネスコの世界文化遺産に登録された際に、「ル・コルビュジエの設計による当初の前庭の設計意図が一部失われている」という指摘をされました。World Heritage Listには、「国立西洋美術館では、美術館の前庭の本来の意図は、広々としたオープンスペースにすることだったようです。1999 年に前庭に植えられた植栽は、建物の見栄え、主要な景観、周囲の環境を損なう傾向がありました。」と記されています。

旧・正門からの来館者を迎える《考える人》

 世界遺産登録には、真正性【authenticity】(デザイン、材質、機能などが本来の価値を有していること)が求められます。そのため、ル・コルビュジエの本来の設計意図が正しく伝わるように、前庭を本館開館時の姿に可能な限り戻すことにしました。西側の門(当初は正門であった)からのアプローチと開放的な柵、ロダンの彫刻《考える人》と《カレーの市民》の位置をできる限り当初の状態に戻しました。(彫刻の正面が旧・正門からの来館者に向く)また人体の寸法と黄金比をもとに考案した尺度である「モデュロール」で割りつけられた床の目地も、細部に渡って復原しました。

参加者からは次のような感想がありました。

「ガイドさんの話し方がアットホームな雰囲気で楽しく学ぶことができた。」
「説明が明快で分かりやすかった。」
「知識が広がり参加して良かった。」
「西洋美術館建設の歴史を知り、第二次世界大戦が関わっていたことがショックでした。」

 RSSCユネスコクラブは、今後もボランティア活動、勉強会、フィールドワークなどの活動を推進していこうと考えています。