ウィメンズクラブ4月定例研究会  難民支援~ドイツの経験から何を学ぶか~

 1 日時:2018年4月6日(金)13時半~16時

 2 場所:FMビル集会室

 3 参加者:14名

 4 講師: 松原好次 様

今回は、ウィメンズクラブの活動の一つである「女性を取り巻く社会問題について考える」ジャンルで、「難民支援~ドイツの経験から何を学ぶか~」というお話をお聞きする機会を得た。松原様は大学を定年退職された後、ご自身の学びのテーマとして「難民支援」に取り組んでおられ目下、単行本発刊に向けてご執筆中とのことです。

2015年の晩夏、72万人もの難民がドイツに流入― 。この現象を語る際の用語として「難民危機」という呼称が定着した。当初、ドイツの国民は「歓迎の文化」を発揮して難民を温かく迎え入れた。しかし、時の経過とともに、「難民危機」は「難民問題」と受け止められることが多くなり、難民受け入れに対する否定的な声が大きくなって来た。その結果、「反難民」だけでなく、「反移民」「反イスラム」といった排外主義的な動きが、ドイツの内外で力を得てきた。

一方、ドイツ国民の約1割にあたる800万人もの人たちが、何らかの形で難民支援の活動に取り組んでいるという。日本のマスメディアでは殆ど取り上げられることのない支援の実態を紹介して下さった上で、なぜドイツが多くの難民を受け入れ、今もなお多くのドイツ人が支援活動を続けているのか、

難民は「問題」なのか、「問題」であるとしたら、なぜ「問題」なのか。日本の難民受け入れ(2017年の難民認定者数は20名)とドイツの受け入れ実態を比較することから、私たち一人ひとりにとって「難民問題」が何を意味しているかについて意見交換した。

<意見交換の骨子>

・難民や移民に仕事を奪われる。社会の安寧を崩される。社会保障の「ただ乗り」。宗教や文化の面で統合は難し い。特に、言語の壁は大きく高い。難民問題は容易に解決できない。

・難民も住民も「漠とした不安」のうちに暮らしている。そこに排外的な「壁」が生じる。

・映画『海は燃えている』に出てくる弱視の少年のメタファー。日常生活で目に入ってこない難民の姿は、努めて見ようとしない限り見えてこない。

・NHKドキュメンタリー『ラーマのつぶやき』に出てくる父親が継続的に働けるとよい。

・「政治的被迫害者は庇護権を享受する」という条項が基本法(憲法)にあることを知った。

・過去の過ちを忘れまいとする「忘却に抵抗する文化」が「歓迎の文化」を支えている。

・ドイツと日本の状況を単純に比較はできない。しかし、草の根的難民支援の例を見て、一人の市民という立場でできることがありそう。

・異質な物や人を排除しない心構えこそが「難民支援」の第一歩かもしれない。

     

  『ラーマのつぶやき』(3/27に放送)

4年前に、日本で初めて難民認定された埼玉県に住むシリア出身の16歳の少女ラーマさんとその家族が取り上げられたドキュメンタリー

 

<研究会を終えて>

「難民について考える」ことには日頃馴染みが少なく、なかなか当事者意識のなかった私達であったが、松原様は、難民とは?から始まり、世界中に起きている現状と課題等を丁寧にご説明くださり、また時折ユーモアを交えながら質問にも真摯にお答えくださったので、皆知らず知らずに問題意識を持つことができたのではないだろうか。

もし身近にそういう人がいれば、例えば一緒に食事作りなどをするのも支援の一法であり、何も大上段に構える必要はないということが分かった。会員の中には既に地元で支援活動をされている方もある。これから機会があれば何かできることをしていこうと思う気づきを与えていただき、そして今世界で起きているいろいろな社会問題についてもしっかり見ていきたいと改めて思った研究会となった。

 (記 松原・小杉)