ウィメンズ4月定例研究会―「タスマニアの自然を通して」
1.活動日 2016年4月14日(木)13時~15時
2.場所 セントポールズ会館 2F すずかけ
3.出席者 12名(会員)
オーストラリアの東南240Kmの沖合に浮かぶ島、タスマニアはオーストラリアの中でも特異な州である。それはかつてゴンドワナ大陸の一部であった事と、2万年前にオーストラリア本土から分かれたために生物が独自の進化を遂げてきたことに起因している。この島でなければ見る事の出来ない特異的な生物が、近年急速に数を減らしているという。絶滅の恐れのあるこれらの動植物を今の内に見ておきたいと現地日本人ネイチャーガイドの案内で見て回った。
【タスマニアの概要】
おおよそ南緯41度~47度(札幌は北緯47度、函館41度)、丁度地球を赤道で折り返すと北海道と重なる位置関係である故か、自然も風景も北海道に良く似ている。
山岳の森林部は霧雨や驟雨が多く冷温帯雨林を呈し、平地は乾燥気味でぶどう畑や農作地、牧場が広がる自然豊かな島である。面積は北海道の約8割、人口は北海道の約1割の51万人に過ぎない。氷河が作り出した美しい景観、地質学的遺跡、今に残る古代植物、固有の珍獣の宝庫として世界自然遺産に指定された国立公園が島の面積の4分の1を占めている。原住民のアボリジニは18世紀末に入植したイギリス人の殺戮の対象となり、また外から持ち込まれた感染症により滅亡した。
主な産業は鉱業(銅、亜鉛、錫、鉄など)、林業、農業と観光。収入は本土に比して決して多くはないが、人々は夕方4時には帰宅し、家族と共にアウトドアや文化活動にと余暇を楽しんでいる。社会福祉は厚く、老後の生活・医療の心配はない。この高福祉は30%もの税金に支えられているとか。第1次産業が主であるためか、教育への関心は薄く、タスマニア大学があるものの、高等教育を望む人々は早い段階で本土に転居してしまうと言う。イギリス人が開いた島であり住宅を含め生活文化は英国風である。
【タスマニアが抱える今日的問題】
・上海からの直行便が出来たことによる中国人の増加;目的は観光及び住宅の購入。
排外主義が未だ払拭できない国とは言え、経済益は大きいので背に腹は・・・。
・林業で発展し巨木・大木は今や殆ど消失。植林しても200年は必要。NPO画辛うじて
残存する巨木の保全維持に。巨木の森は大きな観光資源である。禿山、放棄地の増加。
・固有野生生物の絶滅危惧。人間が持ち込んだイヌの野犬化やネズミ退治のキツネが増加。
人間が使用する化学物質・薬品やごみ・汚物による環境汚染。車との衝突や轢死事故。
世界遺産の対象は氷河が作り出した自然と地質学的遺産及びタスマニア固有の野生生物である。
・ユーカリチップは近年上質ティッシュの原料として輸出増(8割は日本向け)となっている。この結果。ユーカリの大木は消失、植林で対応して要るもののユーカリ林は激減。
・若年層や教育レベルの高い人たちは離島してしまう傾向が続いている。
(文責 北澤)
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