2024年8月24日(土) 、箕口雅博先生による「コミュニティ心理学 連続講座」の第4講が、セントポールズ会館2Fにて開催されました。第2、3講では、コミュニティ心理学に基づくコミュニティへの介入・支援の方法の4本柱(予防的介入、危機介入、コンサルテーション、サポート・ネットワーキング/コラボレーション)について、オンラインで学びました。最終の第4講では、自らの行動変革につながる実践方法を学べるとあって、厳しい残暑にも関わらず、期待に胸を膨らませ、22名が集いました。

1) さまざまな領域におけるコミュニティ・アプローチ

事例として、先生の関わるNPO法人が行った東北の被災地における心理社会的支援の事例「被災写真を清掃・整理し、常設的に展示し持主に返還する」を紹介いただきました。被災者は復興過程で「写真」と「過去を思い出すことや過去の何気ない日常を語ること」を失っており、喪失をともなう危機の回復には、寄り添う、ただそばにいるという「すごす」かかわり(写真を介したコミュニケーション)が大きく寄与すると指摘されています。このように、紛争地・被災地における危機へのサポートの場合、コミュニティ全体の危機がどのようなものであるかをアセスメントするとともに、コミュニティのもつ支援力を引き出していく仕組みをいかに構成するかが重要です。なお、写真から「さまざまな関係性や光景」が想起されるため、支援者(ボランティア)などへの心理的サポートを必要とされるケースも多くあります。

2)コミュニティ支援とコラボレーション

人間の営む行動は、社会システムの一部分であり、個人よりシステム(場)を念頭に置いた支援が有用です。直線的思考(原因はひとつと考え、犯人捜しをする)では問題複雑・停滞化してしまうことも、円環的思考(ああもこうも見える。原因は結果であり、結果は原因である。一人ひとりの行動や言動(部分)にこだわらず、部分と部分のつながりに注目する)ならば、対話を通じて、出来事に対して多くの仮説を立てられ、解決につなげることができます。

支援に取り組む際のポイントとして、①社会資源連携のソーシャルワークのセンス、②相手理解のコミュニティセンス、③任せる柔軟性と寛容性、④価値観を押し付けない、⑤コミュニティの一員である自覚が挙げられます。

3)コミュニティ支援・多職種協働に活かせるコミュニケーション~円環的対話実践のすすめ

アドラーは、心より関係を重視しており、『人間の悩み・問題は、すべて「対人関係」の悩み・問題である』、『その問題は、人が他者に関心を持っているときに限って解決可能なのである』と言っています。支援には、相手の心を分析するよりも、自分と相手の関係性を理解しようとすることが重要であり、対人関係の問題の解決とは、「いかに良好な人間関係を作りながら、相手としっかり対話できるか」ということです。

「対話主義(対話によって心が生まれる)」にもとづく対話実践とは、話を聴いてもらい応答してもらっていることを感じることであり、「円環的対話(オープン・ダイアローグ)」です。基本スキルは、①イメージしながら傾聴する、②理解のための質問をする、③反応・応答しながら傾聴する、④自分の「内閉イメージ(内的対話・体感覚)」の観察と表明を行うことです。技法としてリフレクティングトーク(here & now:その場で感じたことを語る、アイ・メッセージ:断定的な話し方を避けるなど)が用いられます。

グループワークでは、円環的対話実践の学びを踏まえて、傾聴・対話力、相互サポート・ネットワークの促進を目的に、1分間スピーチ(①3人一組のグループでテーマ自由の1分間スピーチを3人が順番に2巡行い、次に2分間、全員で自由に対話をしながらシェアリングする。②グループを再編してグループワークを行う。③全員が輪になってフリー・トーク(感想、気づき)を行う。)を行いました。一生懸命に話す・聴くだけでもポジティブになれた、基本スキルが大切(最初に話されていた内容を思い出せなかった)などの感想が聞かれました。

最後に、先生は全4講を総括するとともに、「共同体感覚(他者に貢献することで幸せを得る)を発揮していきましょう。」と、優しく受講者の尻を叩いてくださいました。本講座の受講者は、心理的支援を必要とする活動に参加している方が多く、納得感を持って受講されている様子が伺えました。学びを業務や活動、日常生活に活用し、互いを思いやり、支え合う、誰一人取り残さないコミュニティを築いていけるよう微力ながら心掛けて参ります。

14期 比田井 徹夫