2025年6月7日、箕口雅博先生による、あどらーカフェ勉強会が池袋あうるすぽっとにて開催されました。

 蒸し暑く不安定な天気でしたが、先生と21名の参加者が集まり、資料を使った先生の講演、スタッフの皆さんの準備により、始終和やかかつ熱心な学習会となりました。

はじめに

 アドラー心理学は、個人の思考、感情を理解し、人間がより健全で幸福な人生を送るための指針を示しています。

 一方、19世紀の英国の詩人ジョン・キーツによる「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念は「どうにも答えが出ない、どうにも対処のしようのない事態に耐える能力」と説明され、近年心理学分野でも再評価されています。

 今回の勉強会は、アドラー心理学とネガティブ・ケイパビリティの概念を統合し、アドラー心理学の理解と実践的応用を促進することを目的としています。

 学習の流れは、まず先生からアドラー心理学の復習、続いてネガティブ・ケイパビリティの概念と実践についての講義がありました。その後、グループに分かれて1回目のワークを行いました。

 次に「アドラー心理学とネガティブ・ケイパビリティの統合」についての講義があり、隣り同士のペアで、2回目のワークを行いました。

 最後に先生からアドラー心理学とネガティブ・ケイパビリティを活用するための提言でまとめとなりました。

 1アドラー心理学の理論と実践

 ①劣等感と優越性の追求
 ②課題の分離
 ③勇気づけ
 ④共同体感覚
 ⑤ライフ・スタイルとライフ・タスク
 ⑥承認欲求の否定と自己決定性

上記6つの主要な理論とこれらがどのような場面で実践されるかの講義があり、これまでの復習になりました。

2ネガティブ・ケイパビリティの概念と実践的活用

①ジョン・キーツによる定義

英国の詩人ジョン・キーツは「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉を着想し、この能力を「人が不確実性、神秘、疑念の中にいることができ、事実や理由を性急に追求することなくいらいらすることもない状態」と定義した。

②心理学・カウンセリング分野での活用

キーツの死後170年が経ち、同じく英国の精神分析医ウィルフレッド・ビオンがネガティブ・ケイパビリティの概念を改めて見出し、心理臨床の現場で広めた。日本でも臨床心理学者の河合隼人が、その重要性を強調している。

③「不確実性への耐性」としてのネガティブ・ケイパビリティ

ネガティブ・ケイパビリティは、予測困難な時代の今日、重要な能力であり、アドラー心理学の「自己決定性」と相乗効果を生み出すことができる。

④曖昧さ耐性との関連性

ネガティブ・ケイパビリティの「曖昧さ耐性」(はっきり予測しにくい事態に対応する力)は、アドラー心理学が目指す「勇気ある生き方」を実践するために重要である。

ワーク1「今自分が抱えている〝答えの出ない問題・課題”は何か?」

①7人ずつ3つのグループになり、それぞれが考えた課題をポスト・イットに書いて模造紙に貼っていき、話し合いながら分類する。

②各グループから出た課題を発表する。

 その結果

 ・自分(健康・学び・性格)
 ・家族(親子関係・夫婦や兄弟・老後・施設・介護)
 ・対人関係(友人・グループ)
 ・社会問題(米・戦争・環境・SNS)
 ・モラル

  等が挙げられました。

3アドラー心理学とネガティブ・ケイパビリティの統合

①アドラー心理学の概念は、ネガティブ・ケイパビリティを育むための土台になり、ネガティブ・ケイパビリティはアドラー心理学の実践を深めるための具体的な姿勢を示す。

②アドラー心理学とネガティブ・ケイパビリティは、「対話」の場において特に相乗効果を上げることができる。

ワーク2 実践(対話)ワーク

①2人1組のペアになり、「解決しようとしても答えの出なかった人間関係」について、「答えのなさに耐えること」を意識しながら話し手と聞き手に分かれて対話する。

②役割を交代して繰り返し、どのように感じたか振り返り、伝え合う。

③各自、感想や意見をLINEに記入する。

各ペアとも話が盛り上がり、時間が来ても話を打ち切りがたい様子でした。

まとめ

最後に、先生からアドラー心理学とネガティブ・ケイパビリティを日常に活用するための習慣や実践例についてお話があり、それぞれ学習の余韻を感じる中で、会が終了しました。

学習会の後は、池袋駅近の和食居酒屋で懇親会が行われました。箕口先生を中心に楽しく会食しながらも、学習会で聞ききれなかった質問や感想が交わされ、充実した時間になりました。話の中で「ネガティブ・ケイパビリティを知ることで救われる思いがした」「もっと考えてみたい」等の意見が複数聞かれ、次回以降への希望につながりました。

丁寧な資料とともに新たな視点に導いて下さった箕口先生、勉強会を準備・運営してくださった皆様に感謝申し上げます。

12期 辻 紀代子

この記事の投稿者

RSSCあどらーカフェ