2025年3月29日(土) 箕口雅博先生による、あどらーカフェ勉強会がふれあい貸し会議室にて開催されました。
今回のテーマは「アドラー心理学における円環的思考にもとづく対話実践の理論と実際 ~家族会議への活用をめざして~」です。27名の参加者で講義を受け、ロールプレイ・ワークを実施しました。前日までの暖かさから一転、冷たい雨の降る中での開催でしたが、熱く語り合い、勉強会終了時は皆、心の中が満足感で満たされました。
(1)はじめに
アドラーは「人間の悩み・問題は、すべて対人関係にある」と述べています。その対人関係の問題の解決には「良好な人間関係を作りながら、相手としっかり対話する」ことが重要になります。その対話を円滑に進める方法として円環的思考にもとづく方法があります。
本日の勉強会では、円環的思考と直線的思考の違いを知り、円環的思考実践のためのポイント、円環的思考を日常生活に取り入れるための具体的なコツについて理解を深め、「家族会議」に円環的思考をどのように活用できるか、ワークを通して考えることを目的とする、と箕口先生から説明がありました。講義に1時間、ワークに1時間の配分でした。
(2)アドラー心理学における円環的思考の概念と実践
アドラー心理学は目的論的視点や共同体感覚の概念と深く結びついた「円環的思考」と高い親和性を持っています。
問題の原因を特定の要因に帰属させ一方向の因果関係で説明しようとする直線的思考とは異なり、ある現象や出来事についての原因は一つではなく、様々な見方や考え方が存在すると考えるのが円環的思考。人間関係や出来事は様々な要素が相互に影響しあっていると考えます。その円環的思考を理解し対話をすることで問題解決に繋げることが出来ると、先生より図を使っての説明がありました。
(3)アドラー心理学の基本概念と円環的思考にもとづく対話実践
過去の出来事が現在の問題を引き起こすと言う原因論ではなく、これからどうするかと言う未来に焦点を当て、未来は選択と可能性に満ちていると言う対話姿勢をとる事が重要であると、具体例を交えて説明がありました。
また理解するべき基本概念は以下の通りです。
・所属と貢献の感覚を重視し共同体感覚をメッセージとして伝える・問題点や弱点ではなく勇気づけを中心に考える・肯定的なフィードバックを行う・自分の課題と他者の課題を分離して考える・縦の関係ではなく、共に考える横の関係を重視する・クライアントの主体性、社会性を同時に尊重する。
(4)円環的思考を実践するためのステップと留意点
直線的思考による即断を停止し、原因を決めつけずになぜ?と「問い」を行う。問題を個人ものとするのではなく、全体の問題を代表して症状を表している人ととらえる。問題を図式化する。複数の原因のどこかを変化させる。以上のステップで取り組むが、悪者探しをせず、大きな変化を求めるのではなく、小さな変化を波及させることを重視する。これらを念頭にワークに取り組むことを理解しました。
(5)「家族会議」ロールプレイ・ワーク
一人暮らしをしている高齢の母親の介護に関して、息子兄弟とそれぞれの妻の4人での「家族会議」を円環的思考にもとづいておこなう。
参加者は4人1組となり、登場人物の役割を決め「家族会議」を開始。どのグループも、あえて男女を入れ替えた配役にしたり、具体的な人物設定をするなど、多様な発言が出るよう工夫をしていました。
円環的対話をするためには、家族同士で感謝を伝えあうことから始めるようにと先生からアドバイスがあり、終始和やかな会話が進み、ポジティブな雰囲気で家族会議を締めくくる事が出来ました。各グループの発表も、制限時間内にきっちり収められ、学びの多いグループワークとなりました。
勉強会終了後はイタリアンレストランにて懇親会が行われました。箕口先生のお話で始まり、会話の尽きることのないとても有意義な時間でした。
私たちを優しく導いて下さる箕口先生、勉強会を企画してくださった皆さまに感謝申し上げます。
17期 小笠原明美