RSSCはメタバースか

 2008年の開設からすでに15年近くを過ぎ、同窓生の数も1000名をはるかに超えたと聞きます。1000名とはたいへんな数。でも、たんに数が多いから素晴らしいのではなく、お互いを結びつける関係の質が深いから、そこにいることによって生きる歓びを実感できるから、素晴らしいのだと思います。

 ところで、急に話題を変えるわけではありませんが、みなさんは、メタバースということばを聞いたことがありますか。ある本(*)によれば、メタバースとは「現実とは異なるもう一つの世界」を意味する、とのことです。しかし、「現実とは異なる」といったって、どこがどう違うのか。うむ、RSSCと近いのか、遠いのか。気になるところですね。

 で、これも、先ほどの解説本の受け売りですが、メタバースの世界が現実世界と異なるのは、メタバースの世界では、「現実世界の模倣にこだわらず、〈都合のよい世界〉を実現できる」のが、その最大の特徴、利点のようです。「現実世界の理である重力を無視した世界や、年齢、性別といった個人の属性もアバターの設定次第でリアルとは異なる属性に変える」ことができる、そういう世界です。

 しかし、ご存じにように、現実世界の〈都合の悪さ〉の最大の原因は、人間関係ですね。この点については、メタバースの世界では、さまざまのレベルで出現するおそれのある人間関係のいざこざをエレガントに排除し、気の合った仲間同士が「居心地のよいコミュニティ」をつくり、そこで楽しく、快適な時間を過ごすことができるように設計されています。とうぜん、そこにマーケットも生まれるはずですから、GAFAMをはじめ、いま世界中のIT企業が、あらたなビジネスチャンスを求めてしのぎを削っている、という状況を生んでいます。

 そこで、みなさんに質問です。

 RSSCと、これからくることが確実視されているメタバースの世界と、みなさんなら、どちらの世界をえらぶのでしょうか。メタバースなどとんでもない、と考えるのか。うん、両方やってみようか、とチャレンジするのか。

 ホームカミングデーの機会に、話題にしてみては、いかがですか。

 毎年、にぎやかさを増す立教ホームカミングデーの一日が、RSSCのコミュニティの輪を広げ、そして深める機会になることを願ってやみません。

北山晴一(立教大学名誉教授、元RSSC担当教員)

*岡嶋裕史『メタバースとは何か ネット上の「もう一つの世界」』(光文社新書)