60才になった時は「まだ70才代がある」という漠然とした余裕がありました。70才に達した際にはこれがありませんでした。日本人70才男性の平均余命は16.2年、最後の期間は病床でしょうし、まして私の家系に長寿者がいないので「まだ80才代がある」と感じないのだと思います。しかし、それでは少々慌ただしいので70才代を前半と後半に2分し、今暫く「まだ70才後半がある」と考えて過ごすことにしました。
※出所:厚生労働省「簡易生命表」(令和2年)。70才女性の平均余命20.5才。
また、平均寿命(その年生れた
子の平均余命)は男性81.4才、女性87.5才)。

70才到達とコロナ禍を機に、いま楽しみとして進めているのが本棚の整理です。と言っても、私は30年ほど前に神戸から横浜、4年前には都内に転居しましたので、手もとに残したのは150タイトル200冊程に過ぎません。このすべて再読して、75才到達時までに3冊(あるいは3タイトル)に絞ることをゴールとしました。

次の世代にとって私の残した書籍や雑誌(例:右写真)などは、邪魔ものに過ぎないと思います。よって、自分の徴(しるし)としての3冊だけを本棚の隅に残そうと考えたのです。これを選ぶふたつの条件も同時に決めました。ひとつは、再読して自分自身が「私はこんな人間だったんだ」と納得できること。もうひとつは、次の世代が手に取った時に「そう言えば、あの人はこんな感じだった」と同感する確率が高いことです。これを条件に<徴としての3冊>を選ぶ自分だけのプロジェクトを開始しました。

スタートして今は100タイトル130冊程度になっていると思います。もともと私と波長の合う図書だけを残しているので、これが予想以上に面白いのです。手もとにあった7割強が思想・評論なので、多くの本に読んだ折々の線が引いてあります。過去の線引き箇所を見て「なぜこんなところに線を引いてるの!」と驚くことが多々あります。たとえば、本年1月のユリイカセミナーで上田恵介先生が取り上げられた『悪について』(E.フロム)を受講後に読み直しました。初読時は黒、再度時は赤、三読目の今回は紫で線が引きましたが全て一致した箇所は僅かで、「自分の考えは、こんなに変わるのか…」と改めて感じました。読み直した本はメモをPCの専用ファイルに残して処分します。

もうひとつ面白いのは、線を引いて読みたいと思う本を買ってしまうことです。先々月は『国家(上・下)』(プラトン)と『コーラン(上・中・下)』(井筒俊彦訳)を購入しました。本棚のプラトン2冊を読んで処分しようとしていたとき、何気なくネットの記事を見ていたら「米国文系学生が一番読んでいる(≒読まされている?)のはプラトンの『国家』」と出てきました。読んでないなぁ…、悔しいなぁ!と思って買ってしまいました。また、原始仏典・大乗仏典(中村元編)と旧約・新約聖書を本棚に残しているので他の本と併読し始めました。そうするとやはりコーランも読まないと…と思い再購入にしました。同様にして、先月も2冊買いました。

こんな調子なので私の眼力・脳力・気力が続くとしても、70才前半での目標達成は無理かも知れません。何を選ぶのか、自分自身がとても楽しみです。<徴としての3冊>が決まりましたら、Kiss投稿で報告したいと思います-そこまで「Kissの会」が続きますように-。
(7期 杉村)

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