「大切な人の命を守るため、社会を守るため、ステイホーム(外出自粛)を」との都知事の繰り返しの呼びかけを聞きながら、3月中旬よりほぼ3ヶ月、必要最低限の買い物と散歩以外は外出を控え、一日中家の中に閉じこもっていた。医療関係者や運輸・金融・販売等で働き続ける人々(エッセンシャルワーカー)への感謝や申し訳なさを感じつつも、感染への怖れから人との接触を避け、家の中に安全を求めた。「ステイホーム」というより、「巣ごもり」に近かった。
しかし、感染への不安と先の見通せない状況で家に閉じこもっていると、心身ともに不調になりやすい。ストレスがたまり、運動不足にもなる。困ったことに食事量は減らず(むしろ増え)、体重も増加傾向となる。「このままではメタボになる」との危機感から、4月に入るとすぐ、毎日続けられ家の中でできる運動メニューを考え実践した。無理なく継続できることを最優先とし、5分間の『みんなで筋肉体操』(「筋肉は裏切らない」で人気のNHK番組を録画)と、趣味である太極拳を好きな音楽をかけながらゆっくり行なうことを習慣にした。自宅リビングをテーブルとイスを動かし、“にわか運動フロア”に変更してのエクササイズである。
5月になり、外出自粛が長期化すると、この短時間のエクササイズに加え、天気と体調に合わせ1日1万歩を目標に、感染防止対策をしながら散歩を行なうようになった。散歩コースはいろいろで、遠出にも挑戦した。その甲斐あってか、ストレスの発散や運動効果はもちろん、予期せぬうれしい“発見”もあった。散歩途中で見つけ訪れた、目白台にある文京区立「肥後細川庭園」(入園無料)は、まさに「穴場」的スポットであった。5月末には日本庭園の入園が再開されており、訪れた時には人も少なく、心地よいひとときを過ごせた。細川元首相が揮毫したという看板も興味深かった。
運動と散歩という健康的な「新たな習慣」以外では、ネットニュースやテレビの報道番組を見る時間が格段に増えた。メディアの情報は、その真偽は別に話題性に富み、過激で興味を惹く内容や言動(大胆な対策を求めたり、誰かを責めたり等)も少なくない。注意したいのは、医師であり公衆衛生の専門家でもあるハンス・ロスリングが『ファクトフルネス』(日経BP社)で指摘しているように、進化の過程で人間の脳には危険を避けるための「瞬時に何かを判断する本能」と「ドラマチックな物語を求める本能」が組み込まれており、メディアの情報に本能が刺激され、目の前の事実を感情的に間違って解釈してしまうことである。「過激な対策は副作用が大きく、たいていは地道な対策に効果がある」「誰かを責めるより原因に目を向けるべき」ともロスリングは言う。改めて「正確なデータや事実を基に(ファクトフルに)世界を正しく見る習慣」の必要性を感じた。
まだワクチンも治療薬もなく、分からないことも多い新型コロナウイルスとの戦いには、長期戦の覚悟が必要といわれる。山中伸弥教授は、自身のウエブサイトで「現状は黄色信号(注意して進め)が点滅しており、細心の注意を払い社会活動を再開させなければならない」「正しい行動を粘り強く続ければウイルスとの共存が可能である」と語っている。自分自身の社会活動も、「ソーシャルディスタンス」を守り、「オンライン」を活用する等の“離れて繋がる”「新たな習慣」を基に、できることから再開できたらと考えている。
(7期生:北原)
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