新型コロナ収束後の世界に自分は立つことができるのだろうか?大げさすぎる?いやいや、新型コロナウイルスの驚きの増殖戦略が明らかになるにつれて、不安は増すばかりだ。
人との接触を避けることが感染防止の唯一の手段と、ステイホームを続けた3か月。とてもじゃないけどこの事態をポジティブに考えることなどできるはずもなく、辛くて何度も心が折れそうになった。
免疫力を高めるといわれる快食・快眠・適度な運動をこれまで以上に自らに課した。毎日1時間、自分の住まう西東京市と隣接する地域を歩き回わった。寺社仏閣・公園を巡り、咲き誇る桜をカメラにおさめた。季節の推移とともに目に映る花もツツジ、薔薇、紫陽花と変わり、時が来れば必ず花を咲かせる自然の理に、幾分心の平静を取り戻す。家々に囲まれた四角い畑に整然と並ぶそら豆やトウモロコシの生長を楽しみに、朝取りの野菜をぶら下げて歩く帰り道。それらをひとつも無駄にすることなく調理しては食べた。野菜本来の美味しさが沁みる。口福を感じるとき不安を忘れる。
緑色の風の中で、堀りたての筍と出会った。手ほどの大きさの筍を5本、糠で茹でた。灰汁がないから、そのままで十分美味しい。筍ご飯・若竹煮・天ぷらと考えつくだけの筍料理を拵えた。いつもなら息子家族に届けるのだが、外出自粛の真っ只中、孫に会うこともできない。そうかといって一人では食べきれず、おずおずと隣家のインタホンを押す。数日後、珍しく映し出された我が家のアイホンにはお隣さんの顔が。大事そうに差し出された紙袋の中には半紙に包まれた枇杷。挨拶程度のご近所付き合いに変化の兆しあり。枇杷の皮を剥きながら初物を食す。初夏の訪れを告げる甘酸っぱさを味わいながら、長屋的付き合いも悪くないなとにんまりする。調子に乗ってベランダ育ちのハーブをどうぞと衝立越しに手渡す。以来ベランダは物々交換・情報交換の場となる。
ステイホームの一日は長いのか短いのか判断がつかない。読書と散歩と料理を作って食べることで一日が終わる。話し相手がいないのは結構ツライ。何日も続くと声の出し方を忘れそうになる。呼吸が浅くなり、不安な気持ちになる。そんな時に優れたテクノロジーとの出会いがあった。いわゆるLINEのビデオ通話。それまでほとんど使うことはなかったが、今回はまさに救いの神。会うことができない孫の顔を見るだけで幸せホルモン・オキシトシンが分泌される。さらにSkypeやZOOMなどのリモート会議システムは複数の人との会話が可能な優れものだ。この画期的なツールへ導きサポートしてくれた某氏には感謝の言葉を捧げたい。その存在は知っていたが、実際に使う際に目の前に立ちはだかった壁を取り除いてくれたのだ。初めてPCの画面に知人の顔が映し出されたときは半端なく感動した。習うより慣れよ!今では多くの人たちとおしゃべり、お茶会、飲み会と楽しく活用している。顔を見ながら会話できるという当たり前のことが本当にありがたい。
さて、緊急事態宣言が解除され、経済活動も動き出したが、感染拡大の不安が取り除かれたわけではない。すでに学校も再開され、私も週2日ほどの勤務を再開した。驚くことに学校はマスクと手洗い以外なんの対策もないまま、3密の状態は続いている。多くの子供との接触は、リスクを持つ者には不安材料の一つだ。自分をしっかりガードしなければと思案していたその時、一通のLINEが届いた。
「フェースシールドが入手できたので、よろしければ、おひとつどうぞ。」
沁みるんだよね、こういうの。《ひとりだけど、ひとりじゃない》このフレーズ、どこで聞いたんだろう・・・。
(7期生 斉藤)
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