普段誰かを訪ねて旅に出ることはあまりない。
4年に一度の同窓会で、その友は私に言った。
「ナオ、あの時の大阪は楽しかったね、今は神戸に住んでいるの、神戸に来ることは、ないの?」
あの時······。当時私は主人の会社を手伝い、会社としてのお願いごとをするため、取引先である『彼女』のご主人の会社を訪れたのだ。
厚遇を受けて目的を果たせた私は、大阪駅で『彼女』と会い四半世紀ぶりに中、高時代の思い出、家族や両親の事等を語りあった。しかしそれから間もなく私は会社を閉じることになった。もう『彼女』と語り合うことも無いのかな、と思っていた。そんな折に同窓会で再開した。以前と変わらず柔らかな口調で話かけてくれた『彼女』。
同窓会は、還暦祝福礼拝、というストレートなネーミングの特別な同窓会で、母校のホールを貸し切り、チャペルでの礼拝、中庭のクリスマスツリーの点灯と続いた。チャプレンが優しく語る。
「皆さんは、還暦を迎えられて、人生一周廻ってゼロになりました。また新たなスタートです。自分を労り大切にして、今日ここに来られなかった友に心を寄せ祈りましょう。」
美しく照らされたパイプオルガン。暖色にフォーカスされた懐かしい校舎。温かい時間が流れる。
数日後、同級生で親友のマリから連絡が入った。
「ナオ、大塚国際美術館に行かない?神戸からバスで行けるみたい!」
神戸!! まさに神戸! 行きましょう!
我が友ありがとう!
こうして同窓会からわずか3ヶ月後、2月23日新天皇陛下のお誕生日に『彼女』とマリ、私は神戸オリエンタルホテルで乾杯する。確かに、その予定であった…。
しかしこの新型コロナウイルス感染拡大。情報は日毎に更新され、対応が求められる。開催を予定していた「ユリイカの会」セミナーもRSSC活動指針に準じて中止を決定、マリも在宅、テレワーク勤務の指示が会社から出された。キャンセル料30%払っても今は止めておこう。
気持ちを神戸の『彼女』に伝える。
「そうよね、お気持ちよく分かるわ。オリエンタルホテルのレストラン、キャンセルしておくね。滞在場所ももっと快適な所が沢山あるから次回は最初からちゃんと相談してね!」
妙にキッパリとした答えが返ってきた。
何とも心強い。ありがとう、友よ。
「皆さんは還暦を迎えて、また新しいスタートです。」
チャプレンの言葉がよみがえる。それぞれに過ごした時間は違うけれど、同窓会でふたたび会えた、還暦祝福礼拝の恵みに感謝する。
この先にどんな景色が広がっているか、今はまだ分からないけれど、友を訪ねて行く神戸は、きっと格別なものになるであろう。そして私自身も「あの時は楽しかったね」と言ってもらえる友であり続けたいと願っている。(7期生:吉岡)
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