ウィメンズクラブ6月定例研究会報告
2 場所 FMビル集会室
3 出席者 9名
4 テーマ 「ルース・ベーダー・ギンズバーグ」
この春、映画「ビリーブ」、ドキュメンタリー「RBG 最強の85歳」の2作品が公開された。どちらも主人公は、ルース・ベーダー・ギンズバーグ、通称RBG。1993年にクリントン大統領よりアメリカ最高裁判所判事に任命され、その反対意見の切れのよさから、若者からも支持されている注目の女性である。今回の研究会は、映画を鑑賞、予習の上でのフリートークとなった。会員の意見を交えつつ、RBGを紹介しよう。
「この映画ではじめてRBGを知った」
「こんなパワフルな女性がいるなんて、びっくり」
「アメリカでさえ、少し前まで働く女性にとっては厳しい環境だった」
ルースは1933年にニューヨークのブルックリンでユダヤの家系に生まれた。厳しくも愛情深い母とウクライナ出身の父の下、まだ女性が学ぶことが難しかった時代にコーネル大学へ進学。在学中に生涯添い遂げることになる夫、マーティン・ギンズバーグと出会い結婚。
「並外れた努力家、勉強家」
「逆境をものともしない」
コーネル大学卒業後、夫マーティンと同じハーバートロースクールに進学。在学中は夫の癌の闘病、生まれたばかりの娘の子育て、ハードな授業への出席や課題提出を両立させる。転学後のコロンビアロースクールをトップで卒業するも、女性弁護士を受け入れる法律事務所はなく、ロースクールの教授となる。同時に「女性の権利プロジェクト」立ち上げに尽力。後に同プロジェクトの顧問弁護士となる。
「お母さんの『淑女たれ、自立せよ』という教育方針がすばらしい」
「敏腕弁護士なのに、ウーマンリブの先頭に立つようなタイプとは一線を画している」
ルースの母はルースが高校を卒業する2日前に癌で亡くなる。しかしそれまでに母から学んだ教え「Be a lady and be independent」は、ルースのその後の人生の大いなる指針となった。ルースは言う「淑女たれ、というのは華やかなドレスを着なさいという意味ではなく、自分の感情をコントロールし、怒り、悔恨、妬みに流されるなということ。こういった感情は徐々に力を奪うものでしかなく、前進できなくなります」
ルースは非常に仕事熱心であるが、仕事オンリーではない。忙しくても、大好きなオペラ、読書、芸術のための時間を大切にしている。「偉大なオペラ歌手になる才能はありませんから、法律の世界で活躍したいのです。法律に対しては身を捧げるほどの愛があります」
「夫のマーティンが素晴らしい」
「妻を心からサポートできる男は、自分に自信があるから」
「マーティンのような男性は今の時代でもそうそういない。まして1960年代では尚更」
「女性が社会的に活躍するには、独身を通すか、理解ある夫を持つか、どちらか」
「マーティンとの出会いは人生で一番の幸運です」とルースは言う。控えめでシャイなルースと対照的な、陽気で社交家の夫マーティン。自身もニューヨークで名の知れた有能な弁護士だったが、「妻が出世したから引っ越した」というジョークと共に、ルースを支えるため一家でワシントンに移住。妻の才能を誰よりも信じ、献身的なサポートと法曹界筋への猛烈な売り込みをかけたマーティンの手腕があって、ルースは1993年クリントン大統領に女性としては史上2人目となる最高裁判事に指名される。
「原則として妻は僕に料理の助言はしない。僕も法律の助言はしない。これで互いにうまくいく」と夫が言えば、娘は「私が育った家庭では義務を平等に負担しています。父は料理担当で、母は考えるのが仕事です」
この日の研究会は、ルースの情熱と勤勉さ、マーティンの真の平等精神を讃える意見に終始した。マーティンは故人となったが、2度の癌を乗り越え86歳になったルースには1日でも長く判事に留まってほしい。ドキュメンタリーではルースが筋トレに励む姿も紹介された。裁判所が政治において極めて大きな役割を果たすアメリカでは最高裁判所判事は国の方向性を左右する立場にあり、その任期は終身なのである。
ルースが生まれた1933年はドイツのポーランド侵攻が始まった年。第二次世界大戦へ向かう時代にユダヤ系の家庭で子供時代を過ごした体験は、少なからずその後の人生に影響を及ぼしているだろう。常に弱者の視線、女性やマイノリティの権利発展に努めているのは「小さき立場」を知っているからである。トランプ政権の下、ますます保守化が進むアメリカ、最強の86歳RBGから目が離せない。
(記 川口)
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