ウィメンズクラブ5月定例会『もっと知ろう、近くて遠い国との関係』
「慰安婦」のことを学んだ中学生と大学生~から考える
1 日時:2018年5月11日(金)13時半~16時
2 場所:FMビル集会室
3 参加者:14名
4 講師:小堀俊夫 様
今回も、「女性を取り巻く社会問題について考える」ジャンルで、隣国でありながら近くて遠い国・韓国との関係、中でも日韓合意がなされた今日でも続いている「慰安婦」問題について学ぶ機会を得た。一体この問題の根源はどこにあるのだろうか。解決の道筋をつけることができるのだろうか。
講師 の小堀先生は、長年公立中学校で社会科の教師として、「慰安婦」の問題も授業に取り入れ、生徒たちと共に考え、歴史上の事実をきちんと伝えてこられた方である。そして、現在は私大で社会科教師を目指している大学生に地歴指導法などを教えておられ、今回ウィメンズクラブの私たちにも丁寧に分かりやすくお話し下さった。
2012年より中学校で使われている歴史教科書から「慰安婦」という語が消えた。何故なのか・・・。
小堀先生は中学生という思春期の子どもたちにいかにして「慰安婦」のことを授業に取り入れたか、その授業方法や、生徒たちがどう受け止めたか、などを話して下さった。「慰安婦の授業は中学生にふさわしくない」、「早すぎる」との主張が強かった2001年。本当に中学生にはふさわしくないのか?それ以来先生は、自問自答しながらも工夫を重ね、加害者と被害者という両方の立場の人々の証言をもとに生徒たちと一緒に歴史の事実に向き合われた。
*20歳で出征し36歳で帰還した元日本軍兵士から、生々しい戦争体験とその後の人生について直接教室で語ってもらい、『慰安所へは絶対に行くまい』と思っていたその元兵士が何故慰安所へ行くようになったのか? などを皆で考え話し合った。
*騙され強制的に戦場に送り込まれた元慰安婦(当時僅か15歳の少女)の慰安所での辛い体験、その後の過酷な人生をビデオや作品を通して知り、彼女の心に寄り添った。
など、先生の授業内容を詳しく知り、私達もその授業を追体験しているような気持になった。証言を聴いた中学生たちは、「知らないことは辛い思いをした人に失礼」「事実を知ることが大事で、そこから未来がある」などの感想を述べたそうだ。そして大学でも同様の授業をしたところ、教師の道を歩もうとする学生たちからは「私たちはこれから教育者という立場になって、次の世代の子どもたちにたくさんのことを教えていくが、日本人がこれまでしてきたことは伝えるべきだと思う。誤った歴史を繰り返さないためにも、そのための歴史であり、社会科であると思う。中学生・高校生は子どもであるが、彼らなりに考えを持つことができる・・・」「教師が見て見ぬふりをしないできちんと教えなくてはいけない」などの意見が出されたそうである。そして、中学生も大学生も、二度と戦争は起こしてはいけないという共通の認識をもったとのことだ。「戦争の本当の実態に迫っていこうとする時、教科書に書かれていようがいまいが、「慰安婦」の学習も共に学ぶ必要があり、そうしなければアジア太平洋戦争の学習は完結しないのである」と小堀先生は断言された。
<意見交換>
・何故このようなことが行なわれたのか、私たちは習って来なかった
・昔は韓国に対して差別意識があった
・中学生でも深く考え悩みその人たちに心を寄せることが出来る
・戦場での兵士たち、極限状態の時と平和な時に考えるのとは違う
・戦争は女性も男性も犠牲者となる
・韓国の人達の願い→上辺だけでなく心から謝って欲しいと思っているのでは
・首相が手紙を書くというのも謝る方法の一つではないか
・海外ではsex slave(性奴隷)、日本では慰安婦→用語の違いは認識の違いに
・メディアに振り回されないリテラシー能力を磨くことが大切→本質を見極める目をもつ
・前向きな教育が大切→小堀先生は日韓合同授業を企画、教師の交流など実践されてきた
・韓国と日本の国民性もあるのではないか→被害者の感情として
・韓国の方々との個人的なつながりも大切→政府と国民一人一人は別
・戦場という地で男性の必要悪→(資料より)もしも慰安所がなかったなら・・・
・学べば学ぶほど複雑だか、ただ戦争は絶対悪である
・不戦の決意を子どもたちに伝えていくことが大事
証言者は、二度とこのようなことが起きないようにとの思いから辛い過去を次世代に伝えようと思われた。元慰安婦が描かれた「責任者を処罰せよ、平和のために」という作品には、許し難い感情が溢れんばかりの中にも希望の鳩が飛び、巣には新たな命が宿っていた。私たちはそのメッセージをしっかりと受け止め次世代に繋ぐ役割を担っていかなければならないと思った。
最後に小堀先生が古書店街で収集された戦時下の雑誌「主婦の友」(一冊四十銭)を会員全員に下さった。女性も子どもも挙国一致の国防生活を強いられていたページが溢れる中にも、必死で生き抜いた庶民の知恵が詰まっていた。親世代の苦労に思いを馳せながら、非戦の思いを一層強くした貴重な研究会でもあった。(記:福井)
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