2025RSSCホームカミングデーに寄せて

大熊 玄

 こんにちは大熊玄です。ホームカミングデーに寄せた文章、修了生も読まれていることと思います。私がこのRSSCで講義を始めたのは、ちょうど令和元年でした。それから今年度までに受講していただいた皆さん、お久しぶりです。そしてありがとうございました。おかげさまで、まだ講義をしています。

 さて、私の講義は「日本の思想を名著でたどる」というタイトルで、日本の古典的な文献を毎回ひとつ取り上げて、紹介・解説しつつ、現代に生きる私たちにとって、それがどのような意味があるのかを考えるものです。

 私の専門は、インド・中国・日本など、いわゆる東洋の思想・哲学で、その宗教にも強い関心がありました。この講義では、そのなかでも日本の思想がテーマで、例えば十七条憲法、古事記、万葉集。方丈記、枕草子、徒然草の三大随筆。そのほか歎異抄、正法眼蔵随問記、風姿花伝も読みました。受講する前は、難しいと思われていた人も、講義が進むうちに、そこまで難しくもなく、案外「古典」は面白いと感じてもらえたかと思います。

 実は、この講義は、他大学の学部生向けの講義をベースにしており、ほぼ同じ内容の講義をすることもありました。そこで驚くのが、その二十歳前後の人たちと、六十代以上のRSSCの皆さんが面白いと思ってくるところが、かなり重なっているということです。また、毎回のコメントでよく言われるのが、「中学・高校で、こういう話を聴きたかった」という感想でした。

 やはりここまで時代を越えて残っている「古典」は、たった四十年の世代差なんて軽々ととび越えて、それを学ぶ喜びを与えてくれるものなのだと思います。そうした魅力を、限られた講義の時間の中で、可能なかぎり受講生の皆さんに伝え、その素晴らしさを共有できればと思っています。

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編集チーム 十七期生