ワクワクする修了論文ができるまで

上田信(RSSC専攻科ゼミ担当教授)

 修了論文が完成したときの手応えは、いかがでしたか?

 指導する立場として、セカンドステージ大学の修了論文ほど、ワクワクとすることはありません。学部の学生や大学院の院生に論文指導を行う際には、私の場合、「歴史学」という枠から外れることはできません。セカンドステージ大学の場合は、まったく自由なのです。

 しかし、受講生の立場からすると、この「自由」という点で苦労するのではないでしょうか。上田信ゼミナールでは、「自分にしか書けない論文を書く」ことを目標として、次のような手順を踏んでいます。

 まずは黒板またはホワイトボードを目いっぱい使って、各自の人生のターニングポイントを年表のなかに位置づけてもらいます。「いつ・どこで・だれと」などの記憶とともに、その出来事を語ってもらうようにしています。ある年度では、ターニングポイントとなった出来事の場面を、絵として描いてもらったこともあります。これは手間が掛かりましたが、興味深い展開となりました。

上田信@新潟における調査にて
上田信@新潟における調査にて             

 また、自分が住んでいる土地をフィールドワークしてもらうこともありました。自宅の周辺の石碑や史跡を訪ね、地元の産業の現場に足を運び、公共図書館で「郷土の図書」を調べ、パワーポイントを用いて報告してもらうのです。こうした経験に基づいて、夏休みの直前に修了論文のテーマらしきものを考えてもらいました。

 秋学期が始まると、受講生は4人程度のグループに分かれて、それぞれのテーマについて、模造紙と付箋を活用して、ブレインストーミングとKJ法でテーマに関連しそうなトピックを極限まで拡げてもらいます。そして、いよいよ論文の「編別構成」を作成し、執筆の段階へと進みます。

 こうした長い助走ののちに提出された修了論文は、いずれも個性が光る読んでいてワクワクする作品に仕上がっています。

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編集チーム 十六期生