10月14日土曜日、光あふれるおだやかな空が広がっている。窓を開けていたらちょっと肌寒いほどだ。天気は下り坂らしいが、明日はホームカミングデーなので、久しぶりに、本科ゼミでお世話になった上田信先生の話を聴きに行こうと思っている。

と書き始めて午前中に終えるはずだったこの文章が終わらない。身近なことをさらりとつづろうという心構えが悪いのか。800~1500字の指定なのに、たどり着きたいところの半分までで1,000字を超え、夜の10時を過ぎてしまった。私の今日一日の過ごし方と、このエッセーの書き方と、ここ数年してきたことは、相似形を成している。雑事にかまけすぎている。

雑事の一つ一つは決して無駄ではなく、そのほとんどは、心地よく暮らすためにも、人と円滑にコミュニケーションをとるためにも、必要なことだ。それが人生そのものだと言える。それで行けるところまで行ってさよならすればいいじゃないか、とも言える。

でも、たどり着きたい場所があるなら、本当にそこまで行きたいなら、日常のいくつかをあきらめて、急がなければならないのではないだろうか。

この調子でやっていったら間に合わない。最近、私はそのことを教えられ、今回、それを一番書きたいと思っていた。なのに、横道にそれてばかりいる。身近なあれこれをすることも、それを気ままにつづることも楽しい。どストレートは疲れる。試験前につい関係ないことをやっちゃうバカな子どもみたい。でも、その態度は、卑怯だ。最短距離でたどり着こう。思い出すと泣きそうになる、あの人に。そして、全部書き直した。

まず、夏の総括。ほんとに一番暑かった。熱中症になったらなおのこと厄介だから、昼間一人の私のためにも、夜間眠る家族のためにも、惜しまずクーラーを使った。逃げられない花木には、水やりをした。根の浅いものにはもちろん、5年前の塀の工事で更地にして造り直した南側の庭の細い木にも(左写真:一昨年の春のもの)。そして、ニチニチソウは5株枯らしたものの、ほかは何とか守りぬいた。

でも、暑さが和らいだある日、門の横のシュウカイドウ(右上写真)を見て、アッと思った。花が咲いている。夏の間は一つも咲かなかったのに。

適者生存という言葉があるが、弱いものは滅びよとは思えない。でも、出費の問題だけでなく、電気と水をあんなに使ったことは許されるのだろうか。こんな暮らしをしていて原発反対だなんて言う資格はない、と後ろめたく思った。

もう一つ。私はついにコロナに感染した。9月6日の午後のこと。同居の娘に風邪の症状があったが、抗原検査キットで調べたのが早かったのか陰性と出て、警戒しなかったことが敗因だ。熱は37.5°が一日出ただけだったが、喉の痛みと咳がひどく、声が十日も出なかった。症状もさることながら、自分が有害な存在になってしまったことがつらかった。娘は陽性だったが軽く済み、夫にはうつらずに済んだ。

16日には陰性と出て、後遺症もなく、今までビクビクしていたのがむしろ地に足が着いたように感じた。10月初めには、ユリイカの会で宮沢賢治の講義を聴き、二日後に青森旅行に出かけた。星野リゾートのすすきの原を、どっどど どどうど、風に吹かれて、元湯の温泉まで歩いた。自然と言葉の豊穣の二重奏。至福のひとときだった。

そんなこの世の喜びは大好きだし、もっとほしい。でも、久々に病んで、全て失う感覚を味わったばかりだ。森先生が生きているうちに、森先生と話したことを書いて届けたかった。エティ・ヒレスムの話をした森一弘司教のことだ。温泉のようで実は火炎の人だった。燃えさかる横浜を忘れなかったからだ。(7期生 安孫子)
<左写真出所:http://www.kirishin.com/2023/09/02/62066/>

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