6月下旬、北海道・東北を巡る7日間の“鉄道旅”に出かけることにした。是非とも行きたい観光スポットがあるわけではなく、のんびり気ままな一人旅。その日の天気と気分次第で、宿泊先の街歩きでも楽しめれば十分満足。昨年はなにかと大忙しで、ようやく一息ついたところだ。こんな旅も悪くない。そこで、今回は鉄道路線ごとに「心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば…」ということとしたい。

【新青森⇔新函館北斗】
初日は司馬遼太郎が「北のまほろば」と呼んだ三内丸山遺跡で、縄文の風を感じてから函館に向かった。この路線は「青函トンネル」を通るくらいで、さしたる期待はなかったが、新青森を出ると右手に青森湾とその向こうに夏泊半島の山々が視界に入り、トンネルを抜けて木古内を過ぎると、海に浮かぶ函館山がよく見えた。津軽半島と北海道南端の地図を思い浮かべてみると納得の風景だった。

【函館⇔札幌】
函館から特急北斗に乗車して大沼公園を過ぎると、右側に北海道駒ケ岳が姿を現し、やがて森駅付近で太平洋に出る。その後は噴火湾(内浦湾)の砂浜のない海岸線をひた走り、札幌まで3時間50分。長時間海が見えるこの路線に私はほぼ満足だったが、車内販売がないのが残念だった。どうやら東海道新幹線のワゴン販売も終了するらしい。鉄道旅も様変わりした。その昔、新幹線には食堂車があり、地方の駅には駅弁の立ち売りの姿もあった。信越線横川駅の「峠の釜めし」が懐かしい。

【札幌⇔旭川】
これまでは富良野、美瑛を経由しで旭川に入ったが、今回は特急ライラックで石狩平野を北上、所要時間は約90分。この石狩川流域は北海道の米どころ。今や生産量は新潟県に次ぐ全国第2位。泥炭地への“客土”や寒冷地向けの品種改良などの成果だけでなく、「寒暖差が大きいことが稲の生育には良い条件となり収量が多くなる」(農水省HP)とのことだ。冷害はもはや過去のものなのかもしれない。この日(6/27)、人気の旭山動物園の温度計は32.2℃まで上昇していた。

【新青森⇒弘前⇒酒田】
札幌から乗り換え2回で約6時間。津軽の歴史と文化の中心地:弘前に到着。幸運にも弘前城を散策する頃には天候も回復し、津軽のシンボル:岩木山(下左写真)を仰ぎ見ることができた。翌日は太宰のふるさと“津軽”を探索するつもりだったが、あいにく終日雨模様。そこで、早めに北前船で栄えた湊町:酒田を目指し、古き良き時代を伝える街並みを歩いたが、日和山公園(下右写真)から日本海に沈む夕日を眺めることはできなかった。

弘前や酒田は観光客の受け入れ準備が驚くほど整っていた。少子高齢化、人口減少が進む地域では観光が救世主なのだろう。しかしながら、平日の地元商店街の人影はまばらだった。特に、酒田を含む庄内地方の観光資源は豊富だが、新幹線へのアクセスが悪いのが惜しまれる。最終日は“乗り鉄”に徹することにした。酒田から新潟、長岡を経由して飯山線に入り、信濃川(千曲川)をさかのぼり、野沢温泉付近でひと風呂浴びて、飯山駅から北陸新幹線に乗車してこの旅を締めくくった。

そして、自宅に戻った翌日には、出発前に購入した「鉄道旅行地図帳 2023」を開き、旅のルートを振り返った。子供の頃、私は地図を読むのが好きだった。特に鉄道の始発駅や終着駅、その間を流れる川の名前などをチェックし、列車に乗る機会があれば、窓際の席を動かず、自分の未来を夢見るように車窓の風景を見つめていた。もう半世紀以上前の記憶だが、なぜかとても心地よい思い出なのである。
「札幌からの帰り道、弘前ではなく、八戸に向かったらどんな展開だったかなぁ」
また、そう遠くない時期に出かけることになりそうだ。(7期生 石巻)

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