玄関

歴史のある店構え、縄のれんを入ると、そこは京町屋らしい奥行きのある建物、その古さに圧倒される。手前はコの字カウンターで奥が厚みのあるテーブルなっている。手前と奥を行き来するには太鼓橋を渡る。そしてまず日本酒、それも燗酒を頼むと大きな甕にある7種類ブレンドの酒を竹橋杓徳利に汲んで燗してくれる。
短冊手書きの御品書きから、まずは定番の「しめ鯖」そして「赤貝」「京都らしいぐじの酒蒸し」「地鶏塩焼き」と頼み究極の「鯨ベーコン」と注文する。その間日本酒がぐびぐびと進む・・最高級の肴に酒、店の雰囲気、店の対応、客の雰囲気と至福の時間だ。ここは京都千本通中立売上ル(せんぼんなかだちうり)西側玉屋町にある昭和9年創業の老舗居酒屋である。

店内

店内

私は近年居酒屋を旅するようになった。現役時代は同僚&仲間で大衆酒場に繰り出していた。京都のような居酒屋を知り、いつのまにかこのような昭和居酒屋の滞在時間が長くなり居酒屋依存症になっていた。何故このような居酒屋に惹かれるのだろう?日本には多様な呑み屋文化があるが「こだわりの和の酒と肴を出す個人店か家族経営の小じんまりした一人客二人客主体の店」が私の居酒屋の定義なのである。古民家で夫婦経営、カウンターだけとなると最高位の条件となる。
旅先での居酒屋では当然一見客だが、暖簾をくぐるときのワクワク感と不安感、店に入り常連さんに暗黙の了解頂ける振る舞い、そしてお目当ての酒肴と雰囲気を楽しむことになる。そこに職場や家庭にはない遊戯心溢れる「究極の癒しの聖地」があるのだ。転勤や趣向から生活拠点を転々としたが、各地の「聖地」のおかげで明日へのエネルギーを蓄える至福の時間がもてた。

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しめ鯖

それまでも出張や旅先で、その地の居酒屋を探すという楽しみがあったが、最近では居酒屋そのものが目的となる旅が多くなってきた。居酒屋旅を始めて10年位になる。JR東日本で新幹線も含んで定額乗り放題という大人の休日倶楽部がある。今冬は五能線で秋田・能代・青森の居酒屋を巡る旅に行った。冬のみちのく旅3年目になるが、訪れた居酒屋は店主も客も暖かく素晴らしい酒と肴だった。今春は西日本トップと評価する人もいる福岡のカウンターのみの居酒屋にも行った。お店探しも今やネットや本で至れり尽くせりの情報が得られるが、迷ったときには大田和彦氏の「居酒屋百名山」という本を道標に北海道から鹿児島まで多くの山を登ってみた。どれも「聖地」となる店が多く、これからも準備がいらず遭難リスクのない山に登ろうと思う。
皆さまの聖地はどういうところにあるでしょうか?Kissの会から日々感じた事を投稿しそれが皆さまと接する機会となれば幸いです。(7期生榎本)
 写真は「旨いもん三昧やん!!」より http://sibumi.blog103.fc2.com/blog-entry-1643.html

 

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