安曇野との2拠点生活が長くなるにつれ、「特急あずさ」を利用することが増えている。それもお昼ごろ立川駅を出る列車に乗ることが多い。ひととおり支度を済ませて家を出ると大抵この時間になる、というのはこじつけで、は列車の中でお弁当を広げるのが楽しみになってしまい、その時間を見計らって家を出ている節がある。
始めの頃は駅構内の華やかなお弁当屋に惹かれていたが、ある日コンコースの壁際にピタッと張り付くように建っている店舗に目が行った。
「あの赤い制服には見覚えがあるぞ、そうだ崎陽軒だ!」
以前、通勤の途中タクシーに乗る場面で1万円札を崩すために、またある時は残業で帰りが遅くなり、もはや夕食を作る気力ない時、お世話になったシウマイ弁当ではないか!当時750円だったのに950円!・・・。それだけ時間がたっているんだ、致し方ない1,000円以内で買えるのはありがたいと思わなくては。(➡2026年年2月1,180円に😢)。
懐かしさにひとつ購入し「あずさ」に乗り込む。滑りだすように動き出す車内、席に着くと早速紐を解き始める。黄色い掛け紙をめくると出てくるのは割り箸とおしぼりのセット。箸はやや短かいが弁当箱からはみ出さないサイズ感と楊枝までもが収まっている機能性にはむしろ感服してしまう。
シウマイ弁当は冷めてもおいしい。時々まだ温かさを感じられる個体に当たればラッキーと思いながらいただくが、たとえ冷めていたとしても温めて食べようとは思わないから不思議だ。調べてみると、豚肉が冷めた時に臭みを消して旨味を増すように貝柱のエキスを使用したり、ご飯は水で炊くのではなく、蒸気で蒸し蒸しあげてもっちりとした触感にし上げるという工夫があった。そしてココが私の推しなのだが、弁当箱は経木出できていて余計な水分を吸うのに一役買っている。
木の香りがほのかに残るふたをあけ、蓋についている米粒を食べ、懸け紙と合わせて弁当箱の下に収めておく。そしていよいよどれから食べようか迷うわけだが、最近は食べる順番が定まってきたような気がする。まずは筍煮をひとつ、そうそうこの味この味。ご飯が欲しくなる。シウマイは5個入っているのでひとつ目はそのままほおばる。それからはご飯とおかずを交互に食べ、3個目のシウマイから醤油をつけ、せっかくだから辛子もといった具合に進み、最後はアンズで締めくくるのが私流。
一日に23,000個も売り上げるこの弁当、他の人はどんな順で食べているのだろうと思っていた矢先、横浜で行われたZINEでシウマイ弁当の分析本に出くわした。おかずの人気投票はじめ、食べる順番アンケートをまとめたもの。食べ合わせのデータ、発売以来70年に及ぶおかずの変遷が見事に示されていて、共感やら嬉しさやら熱意にほだされて購入。
食べ方は実に様々なので醤油の使い方について少し紹介すると、他のおかずに沁みないように醤油の口をシウマイに刺すようにしみ込ませる派、辛子でシュウマイの上に輪を書き、できた土手の中に注ぐ派、蒲鉾にもかける又は蒲鉾と卵焼きにかける派などと奥深い。これほど色々な流儀が生まれるのは、皆が同じステージに立っているからにちがいなく、おかずは途中多少入れ替わってはいるものの2010年以来シウマイ5個、筍煮、鮪のつけ焼き、鶏のから揚げ、卵焼き、蒲鉾、切り昆布、千切り生姜、アンズ、ゴマ青梅付きご飯、醤油、辛子と変わっていない。
今やこれだけ人気のあるシウマイ弁当だが、全国展開を目指さないという理念がまたいい!「真に優れたローカルブランドはナショナルブランドを超える」のだそうだ。それでこそ神奈川を出て初めて分かった私のソウルフードたる所以なのだと思う。(ちなみに私のソウルフード№2は鈴廣の蒲鉾です)
たまに早い便で松本駅に着く場合は、お土産用にも購入する。賞味期限の問題があるので安曇野に着いたらすぐに配らなくてはならないが、「一度食べてみたかった!」とか「懐かしいわ~何十年ぶり!」という反応をいただくとこちらも嬉しくなり、改めて歴史の重みを感じることになる。
今後シウマイ弁当の分析本と一緒に届けたら話題に事欠かないだろうな。いつの日か醤油さしの「ひょうちゃん」(右写真)が復活することを願いながら。(7期生 森部美由紀)
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