ひと月ほど前、7月7日から16日までの10日間、夫とイタリアに行ってきました。HISの添乗員付きで新婚や定年後の夫婦など26人が参加するツアーで、アルベロベッロ、マテーラ、カプリ島青の洞窟、ポンペイ、ローマ、サンジミニャーノ、ピサ、フィレンツェ、ベネチア、ベローナ、ミラノを回りました。

2連泊できたのはナポリとフィレンツェだけで、朝はまず廊下にスーツケースを出し、朝食をとって、8時とか8時半出発のバスに乗り込みます。着いたら敢然と外に出て、一万歩でも二万歩でも、歩くのです! 初日の気温は32℃でしたが、最終地ミラノでは39℃! サーチャージ12万円込みで一人70万も出して来ているので、根性で観光しましたが、冷静に考えたら正気の沙汰ではないようなハードスケジュールでした。

旅先にイタリアを選んだのは、西洋文明発祥の地を訪れたかったから、それと、今年の前半を使ってイタリアが舞台の惣領冬実の漫画『チェーザレ 破壊の創造者』と辻邦生の小説『背教者ユリアヌス』を読んだからです。読んだだけでなく、重要と思うところ好きなところをA4の紙に合計82ページもぬき書きしました。それほど感銘を受けたので、図書館で借りた本の文章を手元におきたい、買うよりも自分に取り込めると思って。

ファイテンで腰、膝、足首のサポーターを買い、息子の助言でスリや置き引きに有効だというA&Fカントリーのパックセーフというカバンも買い、思いつくことは準備してきましたが、私は元来乗り物に弱く高い所も苦手で、飛行機に乗るところから実は苦行でした。薬を飲むのが遅れてアルベロベッロに着く前後にひどい車酔いをしたり、ピサの斜塔の白大理石の階段を滑らないように踏ん張って昇り降りしたら股関節が痛くなったり、限界だなと感じることが何度もありました。

それでも壮大な眺めを観て面白い体験をして、気づいたことも多く、素晴らしい旅でした。一番は、やはりコロッセオかな。1世紀にできたものを維持してこの夏もここでオペラ上演なんて聞くと、スケールの大きさに脱帽し、古いものを大切にする心持ちに感心します。それから、ミケランジェロ広場から見たフィレンツェの景色、ボッティチェリの「春」と「ヴィーナスの誕生」が私一人の目の前にあった贅沢なひととき、青の洞窟とベネチアのゴンドラの舟乗りの愉しさ、こうして思い出してみると、キリスト教の本拠地に行ったのに、チェーザレ・ボルジアに縁のあるピサ大聖堂を別として、大聖堂や礼拝堂にはあまり心を動かされなかったのだなと気づきました。私は60歳で洗礼を受けた身なのに。

上を見れば巨大すぎ華美すぎ、さぞかしお金がかかっただろうなと、下を見れば像や棺など妄執と顕示欲がすごいなと感じ、高野山の奥の院の墓場まで連想してしまいました。これとイエスと何の関係があるのだろうか、という思いが湧いて消えませんでした。

地続きの大陸では、二千年、四千年、もっと長いこと、戦争をして、奪い合い殺し合ってきた空間と時間が、日本よりずっと大きくて多い。でも、私のためにあいつを殺してくれと「神」に祈る、弱肉強食で栄枯盛衰を繰り返す点で、みな大差ない。ここを変えるためにはどうしたらいいのだろうとずっと考えています。

この旅行にはロングヘアーで行きました。病気の子どもか大人にヘアードネーションするためです。一度だけ、ずっと一生懸命手入れして生きてきた記念に。帰宅した家では予定の工事が待っていました。全照明のLED化を機に31年大好きだったリビングのカーテン(左写真)も新調するつもりです。大切なものは忘れない、変わることを恐れまいと思っています。

(7期生 安孫子)

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