RSSCを卒業して2年後、2017年4月に福島県庁に任期付職員(事務職)として奉職、福島市に単身赴任した。2020年3月に任期満了退職、東京に戻った。農林水産部農地管理課に配属された3年間に感じたいくつかの点を記すこととしたい。

【1】配属後最初に注意されたことは、次のようなことであった。

  • 県職員はいつも見られている存在なので、常にそれを意識して行動してほしい。例えば、身分が明らかになる職員バッヂなどを身につけて飲食したり、赤信号を無視して道路を横断したりすると、匿名通報されることがある。
  • 自動車運転では、公用私用の如何を問わず交通事故に気をつけてほしい。事故を起こすと地方新聞の誌面に載り(県としてプレスに公表する)、最悪懲戒免職になる。
  • 公務員には職務専念義務があり、職務中の私事は厳禁である。もし職務中に私用の必要があれば、時間単位で有給を与える。なお、その際、有給取得の理由を開示する必要はない(申請があれば無条件に有給取得を認める)。

 公務員に対する納税者の眼の厳しさと公務員の堅固な身分保障の裏面を改めて思い知らされた。

【2】仕事の中心は、国費で整備したダム、用排水路を維持管理するための補助金申請・交付に関する事務手続きであった。これらは稲作振興のために明治から平成初期にかけて整備された施設である。現場は施設の老朽化と農業従事者の高齢化に悩んでいた。米への需要減を併せ考えると対応の余地は限られ、暗澹たる思いに駆られた。

【3】福島県は震災・原発事故復興の相当部分を担っている。農業について言えば、大規模農業をイメージして農地をha(100m×100m)単位にまとめ再建しようとしているが、当事者である農業従事者が不在のなか中長期の便益計算が不十分のまま整備を進めざるを得ない現実を感じた。県政の悩みは深い。

 農林水産部は規模としては福島県庁最大の部であり、部員の9割が技官の世界であった。実務面では、事務職の私が出来ることは限られていた。これまでのキャリアと全く違うことにチャレンジできることは喜びであったが、65歳の自分への負荷が少々大きすぎたと反省している。

 最後に一つ。公共機関が募集する任期付職員試験には年齢制限がない。RSSC生にとって必ずしもハードルが高い試験ではないので、職務内容がマッチすれば、RSSC終了後の選択肢の一つとして検討可能と思っている。

2022年9月24日
髙橋裕之
(6期生)