一味違うインド 北部山岳地方

5期生顧問 吉澤 健春

 RSSCを修了して、はや8年。その間、思い返せばいろいろなことに手を染めたが、何一つ身についていないのでは・・・、と反省することしきりだ。

 海外旅行はリタイヤ後の楽しみの一つだった。土日の混雑をさけて旅行できるのが我らの特権と思っていただが、近年は《特権階級》が増えてきて、平日でも空港や観光地は混雑していた(つい今年初めまでは)。インドやネパール、中国、韓国、スリランカ、台湾などアジア諸国ばかりだが、アジアには多様な文化が色濃く残っていて、勉強になった。

 2018年7月。私はインドのレー(Leh)にいた。レーはラダック地方の古都で人口3万人ほどの街だ。この地方はヒンズー教でなく、チベット仏教の地域だ。毎夏、ダライラマ14世が滞在し、大説法会を開催する広大な敷地がある。街の中心からさほど遠くない地域は、インドと中国、パキスタンの国境が定まっていない実効支配の地域だ。最近も印中間で小競り合いがあり死者が出ている。

 レーへは、デリーから5千メートル級の峠を2つも越してタクシー(ジープだが)で20数時間をかけて行くか、国内線で1時間飛ぶか、2つの方法がある。標高3,600mの飛行場は軍のもので、民間は間借りしているようだ。乾燥した岩山に囲まれた狭隘な空港だ。ひっきりなしに兵士を乗せた軍用車が砂埃とともに行きかっていた。
初日は高地訓練のために千メートルほど低いアルチという小さな町に泊まった。初めてインダス川を見た。雪解け水を集めて轟々と流れていた。

 手を切るように冷たい水を乾燥しきったジャガイモ畑に家族で水を引いている姿があった。こんな場所でも少しばかりの貧富の差があるようで、自転車の子の後を何人かの子どもがぞろぞろとついて回っていた。5千メートル級の岩山が見渡すかぎり続いている。オアシスはインダス川や雪解け水で呼吸しているかのようにひっそりと息づいている。ポプラの木がヒョロヒョロと紺碧の空にむかって伸びている。

 4日間で5つのゴンパ(チベット仏教寺院)を見学した。どこも極彩色に彩られた金ぴかの仏像が安置されていた。日本の仏像とは大いに違う。岩山の中腹にあるへミスゴンパでは、精悍な少年僧が祈りを唱えているのが印象的だった。周辺では、お婆さんが仏具や仏像を売っているのだが売る気は全くなく、おしゃべりに興じていた。まるで別世界のような数日だった。

次回は6期の今田さんにバトンをお渡しします。お楽しみにッ!