勝手に使うSDGs
RSSC 10期修了生
青田 主税
最近、SDGs(エス・ディ・ジーズ)という言葉をよく見聞きする。あえて言うまでもなく「17のゴール・169のターゲットから構成された、よりよい世界を目指すための持続可能な開発目標」のことである。
内閣府SDGs推進本部が昨年12月に発表したアクションプラン2020によると「日本は、豊かで活力のある『誰一人取り残さない』社会を実現するため、一人ひとりの保護と能力強化に焦点を当てた『人間の安全保障』の理念に基づき、世界の『国づくり』と『人づくり』に貢献。SDGsの力強い担い手たる日本の姿を国際社会に示す」、と物々しい。
私は専攻科秋学期の時にSDGsの概念を大和田順子先生の「サスティナブルコミュニティの思想と実践」の講義内で知り、なにかひらめきのようなものを感じてSDGsを自分なりにすこし掘ってみた。国際的には国連加盟の193カ国がSDGs達成に向けての数値目標を定期的にモニタリングし、その進捗状況を年次ハイレベル政策フォーラムで報告していること。わが国では政府主導でSDGsが推進され、ビジネス、地方創生、次世代・女性エンパワーメント等の視点からさまざまな取り組みが行われていること。企業ではSDGsをCSRの一環として解釈しているケースも未だに多いが、これをビジネスチャンスとして捉え、環境や社会に配慮した経営で投資を呼び込むという好循環も生まれつつあること。...などなど。
それではいったい「個人」はどうSDGsと向き合っていけばよいのだろうか。RSSC在学中にNPO法人コットンドリームいわきに参加し、東京といわきを往復しながらオーガニックコットン栽培を行っていた私は「なんとなくSDGs的なワタシ」を標榜していた。しかし現実は異なっていた。現実は甘くはなかった。採算ベースに乗せることの難しさ、現地NPOとの温度差、さらにはコロナ禍による移動規制など「なんとなくやっている」ではこのSDGs的活動は持続不可能だったのだ。
救いとなったのはRSSCで学んだ「自分ごと化」というKey-wordである。なにごとも自分の問題として受け止め、自分で解決策をシミュレートし、自分で可能な範囲からアクションを起こしてゆく。さまざまな社会課題を放置せず「自分ごと化」した上での自発性と自律性こそがSDGsの理念そのものなのではないだろうか。
私はこの4月から千葉県南房総市和田町で150坪のちいさな農地をひとりで開墾し、昨秋いわきで収穫した種を発芽させてオーガニックコットン栽培を始めてみた。1年目の開発目標は「試行錯誤の海で泳ぎ、溺れるまえにそこから学べ」まさに勝手な個人SDGs活動である。
SDGsは学習するものでも、議論するものでも、ましてや宣伝するものでもないと思う。「自分ごと化」されたささやかな目標を設定し「使う」ものだと最近は思い始めている。
(編集部注:添付のムック記事は、クリックすると大きく表示されます。)
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