鉢村健先生からのご寄稿

●人類は20世紀後半の激動の時代を経て、いま大きな岐路に立っています。今年開講した私の「金融論」は、こうした社会の環境変化を金融の視点から捉え直そうとしています。本学の学生の皆さんは、昭和・平成と激動の時代の中心で社会を築き、人生を送られた方々です。それぞれに積み重ねた経験と知識はこの岐路に際して大変に重要なものです。春学期では学生の皆さんから沢山のリアクションペーパーを書いてもらいましたが、私にとって刺激的な内容ばかりでした。
●我々が生きている現代社会は、想像以上のスピードで「グローバル化と技術革新」が進んでいます。その一方で「国際秩序の多様化と格差の拡大」ももたらされました。これらの社会現象は単独で発生した訳ではなく、中央銀行によるマクロ的な「金融緩和(負債の膨張)」によって支えられ、ミクロ的には民間事業者の資金繰り黒字化によってファイナンスされます。背後には必ず金融の動きがあるのです。
●立教学院はキリスト教に基づく人格陶冶を行って来ましたが、聖公会はブリッジチャーチとも呼ばれます。つまり旧教と新教の架け橋です。価値観が対立する混迷の時代には「他者を知り」「汝自身を知る」ことがとても大切であり、それによって「本質的で普遍的な課題」が見える筈です。
●その意味から、本学における知的な活動は、多種多様な背景を持つ方々との交流を通じて磨かれ、相互理解が深まります。他者の価値観を認めることは、人格陶冶の「寛容」にも繋がることです。知性の高さとは寛容の高さであり、立教セカンドステージ大学が提供する「学び直し」はその為の最適な環境となることでしょう。私も皆さんとご一緒に学び直し、豊かな人生を創りたいと思います。

鉢村 健