修了論文のジレンマ あれこれ

 私は第2期(2009)~第11期(2018)の本科ゼミ(第9期(2016)は第8期専攻科ゼミ)・修了論文を担当してきた。その経験から,いくつかの修了論文にまつわるジレンマについて紹介する。

・オリジナリティー⇔盗用・剽窃(ひょうせつ): Blackboard→教材/課題/テスト…Turnitinによって類似性指標チェック(既に電子化され参照可能なものとの照合)を行う(これまでの実績では75%~3%)。75%については是正を求め助言を行ったところ通常範囲の35%になった。
 この数字が低ければ低いほど良いと考える向きもあるが,論文作成にあたっては最大限の資料の渉猟が求められる。従って類似性指標の低さはこの資料の渉猟をサボった(不勉強の)結果を示すこともある。

・自分史(相続や訴訟などをも含む)⇔個人情報保護: 自分史はその本来の目的は別として類似性指標を下げるという意味では究極の手法だが,いきおい自分のあるいは関係者の個人情報を不用意に開示・漏洩してしまう危険を伴う。この方向のテーマで修了論文を作成しようとする者は,秋学期の早い時期にそのことをゼミで表明して他のゼミ生の意見等に耳を傾け参考にすることが望ましい。

・opac→文献資料⇔internet→Wikipediaなど: ある修了論文では,書籍資料はなくすべてnetで得たもののコピペであった。これも提出直前に大幅修正を求めた。素晴らしい施設・設備の整った立教大学図書館を利用しない手はない。netは入口として私もよく利用するが,引用・参考文献として取り上げるときは信頼の置ける署名のある文献に絞ることになる。

・文字数を守る: 本科12,000~15,000字,専攻科16,000~20,000字(いずれも個人研究)を守ること。

いずれにしてもどうしたらよいか分からなくて悩んだときは,担当教員に相談するとともに基本すなわち―RSSC Campus Life Guidebook Ⅱ教科課程篇 3.ゼミナール・修了論文 4.…作成 5.…提出,及びMASTER of WRITING― に立ち返ってみることが望まれる。

立教大学名誉教授 鈴木 正男