ウイメンズクラブ1月、2月定例研究会報告「戦争に塗り潰された社会に生きた一人の母」

 1月、2月の定例研究会は、昨年公開された映画「母 小林多喜二の母の物語」、三浦綾子著『母』(角川文庫)を通して、貧しい人々の味方になり反戦を訴えたわが子を最後まで信じ続けた小林多喜二の母について、当時の社会背景も含めて意見交換をした。

 <1月 映画鑑賞「母 小林多喜二の母の物語」>

1活動日 2019年1月18日(金)14時~17時

2場 所 中野ZERO視聴覚ホール 

3出席者 7名

 当日は上映前に山田火砂子監督(86歳)が杖を突きながら登壇され、制作意図について述べられた。「戦前のように母から子供を奪うような時代にならない事を願いこの映画を作った。多喜二のお母さんの受けた悲しみ苦しみを映画で見てほしい。母を苦しませない事は、子供を戦場に送らない事。 全国のお母さんにこの映画を届けたい。この戦争で沢山の優秀な人材を失った。多喜二ももし生きていたら、もっと多くの素晴らしい作品を残したのではないか。これからも「平和」の尊さをアッピールしていきたい」と・・・戦争の悲惨さを体感されている高齢の監督から「女性の皆さん、しっかり世の中の出来事を見て平和な社会をつくってください」と叱咤激励された映画鑑賞会であった。

<2月 三浦綾子著『母』を読んで>

1活動日 2019年2月8日(金)

2場 所 FMビル集会室

3出席者 7名

 著者の三浦綾子は、夫から小林多喜二の母について書いて欲しいと頼まれた時戸惑ったようだが、多喜二の母が最後はキリスト教の信者になったことを聞いて、同じ信仰を持つ自分と生きる視点が同じであることから書くことを決心したそうである。

 

◆意見交換

①そんなに遠い昔ではない時代に、こんな残虐な出来事があったことに驚かされた。

②ウイメンズで取り上げてきた先達の女性たちは、それぞれの艱難辛苦の人生の中で何故か最後はキリスト教に出会っている。それはキリスト教が小さき者(弱き者)を助けてくれることを身を持って知ったからだろうか?

③それに引き換え、在来仏教は何の役に立っているのだろうか?今は葬儀、法要の時にしかご縁がない。

④多喜二はあんなに痛めつけられながら何故偏向しなかったのだろうか?自分の信念が揺ぎ無いとしても、本当に辛く厳しいことだったのではと思った。

⑤当時は言いたいことも言えず、国家に翻弄された。国の持つ恐ろしさを改めて感じた。政治に注意していかなければならないと思う。

⑥近現代史を学校で余り学んでおらず、学ばせてもらえずで時代背景の理解ができていないが、多数の母子が悲しい思いをしていたことがわかった。

⑦多喜二のお母さんの強さ、優しさに触れ、母はやはり子育てのキーマンだと思った。見習いたい。

⑧『母』を2回も読んでしまった!お母さんがキリスト教に救われて本当によかったと思う。多喜二が優しく誠実で、もし生きていたら恋をしてしまいそう!

 多喜二(明治36年12月1日~昭和8年2月20日)の生きた時代は、深刻な不況から来る社会不安などが大きく不条理な社会背景の中で書くこと自体が生死を賭けた戦いであった。しかしながら、今の日本の若い世代における非正規雇用の増大や働く貧困層の拡大、低賃金長時間労働などの社会的経済背景から多喜二が書いた「蟹工船」が再評価されているようだ。よりよい社会を目指して非合法と言われながらも地下活動を続けた人たちには今の虚無感漂う日本の姿はどう映っているだろう。

 軍備にだけ力を注いで、前途ある心優しき若者が29歳で虐殺されたような社会に戻らないために、今私たちにできることは、過去の歴史を直視し学び伝えていくことではないだろうか。多喜二が亡くなった2月に、奇しくも“多喜二の母”を取り上げたことに何か必然も感じられた研究会であった。                 

<参考>:こまつ座&ホリプロ『組曲虐殺』公演情報「小林多喜二の生涯と彼を取り巻く人たちとの日々を中心に描いた音楽劇」・期間:2019年10月6日~27日 ・会場:天王洲 銀河劇場 (記:小杉)

              

   

 

                           

 

                     

 

 

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