ウィメンズクラブ10月定例研究会報告 映画「子ども食堂にて」鑑賞とフリートーク
1.日時 2018年10月5日(金)
10:15〜(映画上映約2時間、上映後出演者による舞台挨拶あり)
12:30〜14:30 ランチと話し合い
2.場所 映画館UPLINK(アップリンク)渋谷 及び近くのBistro LaCucinaにて
3.参加者 5名

<映画「子ども食堂にて」>
 “子ども食堂”という名前は、ここ数年で日本ではかなりの認知度が上がり、広がりを見せています。もともとは大田区の「気まぐれ八百屋だんだん」店主の近藤博子さんが2012年に開いたのが始まり。近藤さんはご飯を当たり前に食べられない子どものいることを知り、自分にも出来ることとして始めたそう。子どもの貧困が2008年以降クローズアップされたことと重なる部分もありますが、映画の中では子どもが一人でも食べに来られる場所として、学校でも家庭でもなく、地域の中で子どもを囲んで周囲の大人たちもともに団欒できる場所としての居場所であることと説明しています。
映画の企画協力に5期生の石田真理子さんのお名前があります。今回の鑑賞会は石田さんが関わった映画でもあるということで、研究会で取り上げることになりました。石田さんは企画協力だけでなく出演もされていました。映画の何箇所かの場面で、子ども食堂の根本さんの言葉の中に運営者としての姿勢が感じられましたが、それはたぶん石田さんの考えと近いのだろうなと思いながら拝見しました。

物語の主人公・千晶は過去に親からの暴力を受けた経験を持つ20才。高校生で家出し、子どもシェルターや自立援助ホームに入所、NPOの人たちの支援も受けながら立ち直り、今は児童福祉司を目指して夜間大学で学んでいるという設定です。彼女が子ども食堂(映画の中では週1回)を手伝うようになり、夕食を食べにやって来る様々な問題を持つ子どもたちに接していく姿が描かれています。また同時に、お寺を利用して開かれている子ども食堂を通して、いろいろな母親の悩みや葛藤、特に里親制度で育った男の子と養育家庭の親の物語も描かれます。子どもや親の問題を丁寧に取り上げ、子ども食堂の運営者をはじめ、社会的養護を必要とする子どもたちに関わる児童福祉や学校の関係者、里親制度や子どもたちを支援し児童相談所と連携するNPOの人たちも登場し、子どもたちを支えている姿がありました。(このNPOの人として登場していたのは、実はこの映画の監督だったのですが、それは後からプログラムをよく見てわかりました。)

<この映画はどういう風に製作されたのか>
製作は「映画製作チーム・Sunshin」、自主映画製作のような感じです。「子ども食堂にて」の前作に当たる「わたし、生きてていいのかな」でも同じ主人公が高校生として登場し、児童虐待や子どもシェルターについて描いたそうです。監督・脚本の佐野翔音氏は企業映像の演出を手がけてきた方ですが、2011年にSunshineを立ち上げ、2015年に、前作「わたし、生きてて〜」を製作、今回の作品は2017年キリン福祉財団から子育て応援事業の助成団体に選ばれて製作をスタートさせたとのこと。
上記写真の映画のパンフレットによれば、何らかの事情を持った子どもの状況を表現する舞台として子ども食堂を取り上げ、現実の問題を提起するとともに、その解決に向けて動く大人たちも描いたそうです。

映画上映後に出演された5名の女優さんたちの舞台挨拶もありました。出演者の方たちは皆この映画や子ども食堂の応援団のようでした。根本さん役の方のお話では、台本は事前に読み込んで、撮影時には台本にとらわれずに自然に演じるよう監督から求められ、そこが難しかったと感想を述べられていました。

<参加者の感想や意見>
参加者の中には地域の児童委員や児童福祉関係の勤務経験者もいました。
*映画の中でも運営者根本さんの『本当に大変な家庭の親子は出て来ない』という言葉があったが、利用してほしい子どもや親には子ども食堂の存在が届いていないのではないか。
*児童相談所も忙しく、虐待件数は増える一方で対応は追いつかない。対応している公的な児童相談所は23区内に数カ所しかないとの実態を聞き、「一区に一つも無いとは知らなかった!」と言う意見も。
*本当に届けたい人に届かないのは子どもの問題だけでなく、高齢者の場合も同じ現実がある。
*子ども食堂の舞台がお寺というのが良かった。お寺というのは信仰の場だけでなく、もとともと地域の教育や福祉、文化の発信の場でもある、と住職が言っていた場面が印象に残っている。
*子ども食堂は、現実に間近に必要な場所として機能していて、近くにあれば親子で救われるのではないか。個人ボランティアというだけでなく地域に開かれた取り組みであること、今の制度に欠落しているところを補っている人がいることがわかった。
*生みの親が育てられなければ、早いうちに里親とか特別養子縁組によって養育されるほうが子どもにとっては幸せなのではないか、日本はその辺のことが外国に比べて少なすぎる。

題名から直ぐに子ども食堂のことが描かれているのだろうと想像できますが、どんな風に描かれているのだろうかという疑問のままに鑑賞しました。映画にはいろいろな子どもや大人が登場し、福祉・教育関係者以外にも人生を語る脇役の名女優がいたりして、全体的にとても良い映画でした。
こどもの虐待やDVは世代間連鎖の事例も多く、国や社会体制に関係なく起こりうる、人間にとって根源的で困難な問題であるように思えます。この映画はその困難に対して一人では解決できないが、夫々の持ち場で、皆で協力し合って前に進もうというメッセージが込められているように感じられました。

今回参加できなかった皆さまも、また当研究会以外の方も、機会があれば是非ご鑑賞ください。
アップリンク渋谷では10/12まですが、関内駅5分の横浜シネマリンで10/19まで公開されています。
(記:藤澤)