7月上旬の日曜日に来客があり、定番のうなぎでも食べようかということで、江戸時代から続く老舗の一つ「小島屋」へ向かった。昼時を避けて13:30過ぎに店に到着したのだが、なんと!17組が店の軒先で待機中。通常15:00が昼の部のラストなのだが、この日は通しで営業するという。梅雨明け前にもかかわらず気温30度を超える暑さの中で、じっと蒲焼を待つ気分にはなれず、すごすごと退散したのだった。土用の丑の日に伴う混雑はまだ先のことと思っていたが、いやはやなんとも……。
浦和に住んで26年になるが、この地の伝統料理といえばなんといっても“うなぎ”なのである。江戸時代、中山道の宿場町であった浦和周辺には大小の河川とともに多くの沼地があり、うなぎの格好のねぐらだったようだ。これらを蒲焼にして旅人に提供したのが評判となったそうで、「蒲焼発祥の地は浦和」と主張する説もあるようだが、文献等で確証が得られているわけではなく、真偽のほどは定かではない。
浦和駅西口にはさいたま観光大使「浦和うなこちゃん」の石像がある。生みの親はやなせたかし氏で、なんとなくアンパンマンと一緒に登場しても違和感のない可愛らしいキャラクターなのだ。駅前は「サッカーのまち 浦和」のキャッチフレーズの下、浦和レッズの赤いフラッグに囲まれて「うなこちゃん」も孤軍奮闘中なのだが、現在でも浦和の街には盛業を続けているうなぎの老舗が数多くそろっており、遠来の客をもてなすのにはもってこいなのである。
一昨年、ニホンウナギは絶滅危惧種に指定された。具体的には絶滅危惧ⅠB類にランク付けされ、「近い将来における野生での絶滅の危険性が高い」と定義され、絶滅危惧種の3区分のうち危険度で2番目に該当するとのことである。昨今、うなぎの代用品としてナマズが脚光を浴び、あの近大ナマズが大手スーパーの店頭に並んだようだ。資源保護の観点から一定の役割を期待したいところである。
しかしながら、伝統の浦和のうなぎは捨てがたい。そのためにもうなぎの完全養殖が軌道に乗ることを祈るばかりである。あれこれ書いていると、ふっくらと香ばしく焼きあがった肉厚のうなぎに、絶妙に絡んだ甘辛いタレの味が口の中に広がってきた。ここは絶滅危惧種の話題を一旦棚上げして、この夏を乗り切るという名目で最寄りの店に出かけよう。さて、どこの店に行こうか、冷えたビールとともにうなぎを楽しむのなら、駅近くの中山道沿いの店がいいかも。いよいよ梅雨明けが待ち遠しくなってきた。
(7期生 石巻)
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