このサイトに、最近何人かの方が「人生これから」のようなエッセイを投稿されている。健康診断の数値が改善されドライブに旅行にと前向きになっている方や、俳句の会に参加され新たな目標ができた方など、多くのシニア世代がチャレンジ生活を続けておられる。

私も、人生もう終わりに近いのか、まだまだ元気なのかなどと思っていたが、先日観た映画の主人公が私達とほぼ同世代で感情移入して見入ってしまった。彼は仕事をリタイヤして数年経ち、でも老け込むにはちょっと間があるといったと設定。『敵』というちょっとホラーな筋書きの映画なのだが、その全体感はともかく、映画の前半のかなり長い時間を主人公の日常の描写に割いている。大学教授を退職し妻に先立たれた、長塚京三演じる77才の初老の男 (写真出所:https://press.moviewalker.jp/mv87628/)。祖父の代からの日本家屋で一人暮らしをしており、主人公の性格そのままの規則正しい生活をしている。

3度の食事の支度と片付け、洗濯、掃除など家事一切を全く手抜き無くこなす。コーヒーの豆を挽いたり、好きなワインを傾けたり。時々教え子を家に招いて料理をふるまい、また気の置けない友人とスナックで飲んだりする。普段は専門だったフランス文学の論文の執筆や雑誌の投稿、まれに講演を頼まれたりもする。遺言も書き終え、家屋敷や原書などの専門書の処分先もぬかりない。そして、「長生きしてもしょうがない」などと友人にうそぶいている。そういう彼の日常が上映時間の半分くらいを使って描写される。主人公の生きざまが淡々と流れていく。映画はこのまま何も起こらず終わってしまうのではと思ってしまうほど。この映画はそのあと不思議な展開をするのだが…。全編モノクロで撮影されている映像を見ているうちに、主人公の人生と自分の現在とを重ね合わせながら、スクリーンに引き込まれて行った。私自身、あと何年生きるのか、これからどうなって行くのかわからない。

現在日本人の平均寿命は男81才、女87才。ただし健康寿命は男72~3才、とある。もうダメじゃないと思ったが、70才の人の平均余命は男15~16年、75才の人は12~13年とある。老いて死ぬまでにはまだ10年、20年ある。もちろん身体的な衰えや病魔からは逃れられないが、やはりメンタル面でそれらを凌ぎ、超えて行こうとすることが、健康を保つ上でたいせつなことだろう。

よく、節目の年齢、例えば70才とか80才になって急に衰えたり、病を得たりすると言う話を耳にする。そういう喩えは、もしかするともう自分は○○才だからと、勝手に老いたと思い込み、その結果、やる気が無くなり不調が進行したりするのかもしれない。若い時はそういう心配がないので、前向きに生きて来られたのだから、年齢をとってもそういう心配を忘れてしまえば、若い時のように、前向きに生きられるのではないだろうか。ちょっと飛躍しすぎだが、体力があるから前向きになれるのか、前向きだから身体がついて来るのか。ニワトリか卵かわからないが、そう考えてみるのも良いことかもしれない。

人生100年時代と言われ始めているが、別段100才まで生きなくてもいいが、でも100まで生きるかもしれない。いつ死んでもできるだけ満足のいくような、そして生きている限りは健康で楽しい人生にしたいものだ。これからの人生の中で、今が一番若い。まだ10年も20年もある。やる気になればなんでもできると自分に言い聞かせ、これからもうひと花ふた花咲かせようと思うと、なんとなくウキウキしてきませんか。(7期生 佐野英二)

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