最近、家庭菜園で野菜作りをする人が増えているらしい。実際手広くやっている方も多いと思うが、私も毎年夏場には、ネコのヒタイのような我が家の庭で、簡単な野菜を作っている。キュウリ、トマト、ナス、ピーマンなど、比較的作り易いと言われている夏野菜を育てては朝食の足しにしている。ポットという大きな植木鉢に植えるか、何本かは地植えにする。今年もポットと地植えに数株ずつ植えた。
4,5月ころホームセンターで苗木を買ってきて植えるのだが、今年は何を何本育てようかと悩むところから夢が始まる。定期的に肥料を施し、脇芽を取ったり、伸びすぎてきたら仕立てと言って適度に剪定をする。さほどの作業ではないが、絶対欠かせないのが水遣り。このところの夏のように毎日酷暑が続くと、1日2回の水遣りは欠かせない。だから夏になったら旅行はご法度。ペットを飼っている人が旅行に行けないとよく聞くが、動物のみならず植物もまた然り。今年はちょうど実が生り始めたころの地植えのキュウリを一株枯らせてしまった。花壇で花を育てるのも楽しいが、生り物は食べられるからいい。朝、採ってきてそのまますぐ食べるのは、なんとなく嬉しく贅沢な気分になる。
私の野菜作りなどは「おままごと」みたいなものだが、実際に、都会でも作物を作ることは大変大事なことだと思う。経済学者の森永卓郎氏はそのことを常に提唱しており、自らもかなり大規模に農園をやっているらしい。さすがにお米は難しいだろうが、野菜類は自家消費の何倍も作っているようだ。
この野菜作りは楽しいと言うだけの話だけではない。食糧難の助けになる。実際、現在の日本の食物自給率は37%とOECDの中でも最低クラス。事実、化学肥料はほぼ100%輸入。野菜のタネは9割が輸入依存。種子法の廃止や種苗法の改定などで自家調達が困難になりつつあり、コメのタネも狙われていると言われている。もしそうなったら日本の食物自給率は10%以下に下がると言う試算まである。
昨今、日本を取り巻く情勢は危険な状況だ。万一紛争が起こったら、まず第一に食物の輸入に影響する。日本が戦争状態にならずとも、この度のウクライナ戦争のように、あっという間に小麦の価格が上昇する。どこの国も自国民の食料が優先で、たとえ友好国であろうと他国への食物の援助は二の次、三の次だ。すると、食物自給率の低い国は、まず、食糧不足が最初に起こる。満足にごはんが食べられなければ戦争どころではない。生きていけない。
前述した森永卓郎氏は、日本の農政に対し極めて厳しく批判をしている。安全保障というなら、食料安保が最も重要。トマホークやオスプレイに莫大なお金を投じるより、まず農政の予算を増やし、食物自給率を大幅に上げることが最優先課題だと。
紛争などが起こらないよう願うばかりだが、気候変動なども食料不足の大きな要因である。その練習ではないが、自分で野菜の一つでも作れるようになっておくのも必要か。それは、労苦の厳しい畑仕事でなくても、ベランダで楽しい野菜作りから始められる。食料危機にどこまで役立つかはわからないが、自分で食物を植え、育て、収穫して、食す。これって人間の基本の営みではないだろうか。Let’s enjoy野菜作り!(7期生 佐野英二)
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