再挑戦20年の暗闘
いまや正月の全国民的イベントになった箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)は。今年が第100回ということでことさら意義深い大会であった。立教大学チームは昨年に続き予選会第6位の成績で本選に出場し、総合第14位で終了した。
立教大学は、かつて第33回大会(昭和33年)には総合第3位の成績を収めたこともある伝統校の一つであった。しかし1968年(昭和43年)以来本選に出場がかなわず校友の多くは長らくやりきれない思いを抱いていた。これを是非復活させようと2002年(平成14年)に上野浅草立教会を中心に「立教箱根駅伝プロジェクタト」が立ち上がった。プロジェクトの初代会長は上野立教会の金子浩一会長(昭36英・上野東金屋ホテル社長)であった。いわば「勝手連」ではあるが箱根駅伝で立教のゼッケンを付けた選手の雄姿を見たいと願い、大学教職員や校友会の役員をはじめ行政やマスコミなど実業各界で活躍される多数の校友も参画し、定期的に会合を持って対策を議論し、実現の暁に必要となる資金の積み立ても行った。活動はさらに署名運動、陸上競技部との情報交換、大学当局への接触など地道な努力を重ねてきた。その中で2008年(平成20年)と翌年に中村嘉孝選手が学連選抜のメンバーで本選に出場して一時は期待が高まったものの、やはり大学が本腰を入れて駅伝に取り組むという機運を見せることはなかった。ようやく事態の変化が訪れたのは、その約10年後、2018年まで雌伏の時間が過ぎていた。一方で趣旨に賛同した多くの有力な先人が鬼籍に入るなど長い時間を経たが、思いを持った先輩方が代をつなぎ情熱を絶やすことはなかった。
再挑戦の着火点
校友会の地方組織の一つ鎌倉・藤沢・茅ケ崎エリアを束ねる湘南立教会は、毎年春に定期総会・懇親会を開催している。2018年3月の総会も鎌倉プリンスホテルで開催することにし、その4月から第21代総長に就任が決まっていた経済学部教授の郭洋春先生を特別ゲストにお招きをした。郭先生は就任にあたって地域校友の声も聴きたいと快諾をされ、懇親会のスピーチで総長への抱負を熱く語られた。120人ほどの懇親が始まると、自席を温めることなくすべての円卓テーブルを回って地域校友のとの交流を楽しまれた。その場で多くのメンバーが口々に、湘南は箱根駅伝のちょうど中間3・8区の地元にあたり、立教の駅伝復活への思いを述べて新総長への期待を語りかけ、その熱気に郭先生は大いに触発されたのでした。
郭新総長は、その年5月の校友会代議員会・会員総会の挨拶で、立教大学を教学・社会活動両面でMARCHレベルにとどめることなく、もっと先へと進めるべきと意欲的な大学運営の考えを発表された。その一つに5年後の立教創設150周年と第100回記念の2024年箱根駅伝へ出場するという大方針をぶち上げた。郭総長はそれまでの方と異なりやや型破りのところはあるが、強いリーダーシップを発揮されてこれらの施策を見事に短期間でまとめ上げられたのであった。そして、新たに駅伝監督の招聘や合宿所の新設など構想の実現に向けて矢継ぎ早に取り組んでいることが公表された。
2021年に西原廉太・現総長が就任したが構想は引き継がれ、駅伝監督の就任によって有力高校生の獲得など選手強化体制も整い、予選会の順位も順調に上がり、ついに計画よりも1年早く実に55年ぶりの2023年第99回大会で本選に復活出場することができ、総合18位ながら江戸紫のタスキをアンカーまでつないだ。こうして今や全国的な正月のビッグイベント箱根駅伝で「R」のゼッケンが疾走することとなり、まさに第100回大会で長年の宿願が結実するところになった。このように立教大学が箱根駅伝へ再挑戦するという大転換の着火点は実に湘南立教会にあり、それが湘南の校友の密かな誇りであります。次年度の目標はシード権の獲得、厳しい取り組みながら更なる飛躍を期待している。(7期生 清水 誠)
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