旅好きには計画段階からワクワクがはじまる。今年の4月JR東日本大人の休日倶楽部で函館から南会津まで4泊5日の旅をした。宿未定の旅は醍醐味があり好きなのだが、今回は旧友との約束もあり1泊のみ宿未定の旅となった。

旅程も決まりチケットの手配も完了した頃、福島県沖地震で東北新幹線の車両脱線事故という甚大な被害が発生し、一部区間が不通になった。その区間は普通列車でも行く覚悟だったが、復旧作業が奇跡的に前倒しになって東京から函館まで直通で行けることになった。再開通初日が旅の初日となった。はじめてグランクラスにも乗ることもできた。東京駅のビューゴールドラウンジで接待を受け、座り心地のよいソファーで快適な旅のスタートとなった。グランクラス車両は独り占めで、豪華お弁当にお茶やコーヒーのサービス、ビールやワインも飲み放題だった。リクライニングチェアーに寝る間もなく函館に到着した。

函館での2泊はこれまでの復習のように、活イカやジンギスカンを食べ、旧函館区公会堂(上写真)など周辺観光を楽しんだ。3日目は旅の目的でもある一関(岩手県)で旧友と合流し、閉店するという店に挨拶に行った。東日本大震災時にお世話になった数々の恩を少し返せた気分だった。

4日目いよいよ宿未定の日だ。南東北は丁度桜開花の時期、福島県郡山駅で下車し磐越西線に乗ることだけを決め、新幹線に乗り込んだ。もう一度三春の滝桜もいいなと思ったが、早くも散り始めたという。会津方面に行こうかと調べていると、湯野上温泉が桜満開そして民宿があることがわかった。口コミでも高評価、宿の予約をとり、磐越線に乗り換え、只見線~会津鉄道と乗り継ぎ、湯野上温泉駅に着いた。レトロな駅に映える満開の桜に心が躍る。

*写真は左から湯野上温泉駅、大内宿全景、大内宿(店)

宿の迎車で約10分、玄関で中国人独特のなまりのある女将が弾ける笑顔で迎えてくれた。実家に帰ってきたように和ぐ。宿泊者は3部屋3名の男たち、順次源泉かけ流し風呂に入りお楽しみの夕食だ。大部屋に5~6名は座れそうな中華テーブルが3卓、それぞれ卓につく。好物の会津の馬肉・アユの塩焼きに、料理好きだという女将の手料理が並ぶ。頃合い見て娘さんが熱々のスープや餃子を運んでくれる。どれも美味しくお酒も進む。初対面の宿泊客は宿の常連さんで他愛無い会話が弾む。

翌朝宿近くの大内宿に行くつもりだと言ったら、女将が御主人に相談し案内を買って出てくれた。早めに朝食済ませ大内宿に行ったら、こんな静かな大内宿があったんだと驚く。原宿竹下通りのような賑わいしか記憶になかったが、朝早く来たご褒美だ。寡黙な人と思っていたご主人も、饒舌で、地元愛に満ち滔々としゃべる。上海出身の奥様の提案で15年前に農家民宿をはじめたこと、娘が韓国留学時に知り合った韓国人と結婚し仕事しながら宿の手伝いをしてくれること、温泉のある故郷で生活できる幸せなどを語ってくれた。人懐っこい笑顔で道すがらの挨拶で地元のムードメーカーであることも伺える。仲良しのグローバル家族から幸せを分けてもらった気分である。

送ってくれたご主人に感謝と南会津への再訪を約束し、湯野上温泉駅を後に鶴ヶ城(左写真)へと向かった。旅行後宿の口コミにも評価を書き込んだ。コロナ陰性証明書を携えての旅は、旧友との再会、グランクラス体験とご当地グルメ、そして超満開の桜に出会えた。

しかし今回の旅のいちばんの収穫は、温もりのある料理、見知らぬ人との交流、心の通うおもてなしの民宿に出会えたことだ。民宿という選択があることに改めて気がついたのだ。さあ、次はどこに行こうか。
(7期生 榎本)

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