東京都美術館でのボランティア活動報告

RSSC10期修了生
岡庭正行

 私は、2019年4月から東京都美術館でアートコミュニケータとして活動しています。アートコミュニケーターは、東京都美術館と東京芸大が推進するアートを介してコミュニティーを育む事業:とびらプロジェクトで活動するボランティアで“とびラー”と呼ばれています。とびラーは、アートを介して誰もがフラットに参加できる対話の場を作り出し、様々な価値観を持つ多様な人々をコミュニティーのデザインに取り組んでいます。
 任期は3年で、任期満了後には多くの人たちが、3年間の活動を通して育んだスキルやネットワークを活かしながら、対話のある社会の実現に向けた活動を継続しています。私も任期満了後は、地元の子供たちに対話型鑑賞法を活用して地元の歴史を教えたり、地元や近隣の市で開催される美術展や美術館での活動を考えています。
 具体的な活動としては、大きくは以下の3つです。

1. 活動に必要なスキルを身に着けるための学び
コミュニケーションの基本、対話型鑑賞法、美術館に来ることが難しい人達を支援する企画、美術館というパブリックな建築を介して人々をつなぐ場のデザインなどについて学びます。講師陣も内容も非常に充実しています。

2. 定例化した行事での活動
休館日を利用して、学校単位で美術館を訪れる子供たちの鑑賞の伴走役として活動したり、障がいのある人達を招いて鑑賞してもらう特別鑑賞会の会場運営やサポートを行ったりします。

3. 自ら企画し、実行するイベント
具体的事例をいくつか挙げると以下のようなものがあります。(4)の活動は中心メンバーとして関わりました。
(1) 赤ちゃんがいて美術館でゆっくり鑑賞することが難しいお母さんたちの支援をします。展示室内では、とびラーがしっかりとサポートし、お話をしながら作品を鑑賞します。
(2) 東京芸大の卒業作品展で芸大生と話しながら作品を鑑賞し、作品のコンセプトや、制作中の苦労話などを聞きます。
(3) お絵描きができる磁気式のボードを使い、こどもたちが展示室の作品をモチーフに絵を描きます。帰る時にぬり絵もできるポストカードにしてプレゼントします。
(4) 独自音声ガイドの制作
今年行われた浮世絵展で5点の作品について独自に創作したオリジナルストーリーをラジオ番組風“とびラジオ”にして、YouTubeで聞いてもらいました。視覚障がい者の方からは作品をイメージしやすかったと好評でした。

 アートコミュニケーターは、18歳から70歳代までと年齢層が幅広く、個性的で、熱い想いを持った人が多いので、活動そのものが非常に楽しいです。コロナ禍の中でも、ZOOMと都美術館での活動をうまく組み合わせ、活発に活動しています。

この記事の投稿者

十期生・ 編集チーム