昨年、日本で開催された「ラグビーワールドカップ2019」は期待以上に盛り上がり(黒田氏の投稿『One teamとrespectの残照』でも取り上げられたが)、ラグビーというスポーツの奥深さや面白さに、多くの日本人(にわかファンも急増したと言われる)が気づかされ、そして感動させられたといえる。サッカーや野球に比べ、どちらかと言えばマイナーなスポーツであったラグビーに、これほどまでに日本中が熱くなり、多くの人が楽しむ姿が見られたのは、超一流選手のプレーや試合内容の素晴らしさはもちろんのこと、「ONE TEAM」や「ノーサイド」というコンセプトも、礼儀、礼節を重んじる日本の伝統とも重なり、広範囲な人から圧倒的な支持を受けたからであろう。

ラグビーワールドカップとは比べようもないが、私事でもスポーツ関連の楽しいビッグイベントがあった。それは、12月11日に東京武道館で開催されたスポーツクラブ主催の太極拳フェスティバルである。前年同様、チームの一員として参加し、想像以上の達成感を味わい、さらなる挑戦意欲まで持てたのである。太極拳経験が一年弱の初心者から30年以上のベテランまで、十数名が観客の前で緊張しながらも練習の成果を発揮し、「ONE TEAM」として心を合わせて演武できたのは、嬉しく楽しい思い出となった。

ラグビーが力とスピード、そして緻密な組織プレーをその特徴とするならば、太極拳は、それとは反対に、力を使わずゆっくりと、できれば掌に目に見えない気のエネルギーを感じながら、仲間の動きと調和し、意念(意識)で身体を動かすのを特徴とする。全く正反対ともいえる運動でありながら、太極拳を通して、「ONE TEAM」の一体感や周囲への尊敬など、スケールは違ってもラグビーと似たような経験を持てたのは、不思議でもあり、大変嬉しいものであった。だからこそ、本当に「楽しむ」ことができたと考えている。

この「楽しむ」という行為は、常日頃から大切にしている自分の価値観、人生観とも合致する。今では、趣味というよりライフワークとして実践している太極拳の稽古のなかで学んだ価値観ではあるが、もともとは次の『論語』の一節から影響を受けている。
知之者不如好之者 好之者不如楽之者
之を知る者は、之を好む者に如かず。之を好む者は、之を楽しむ者に如かず。
(どんなに知識があっても、好む人には及ばない。そして、どんなに好きでも、楽しんでいる人には及ばない)

太極拳においても、「太極拳の知識がある人や好きだという人より、常に楽しんでいる人が一番長く続けられ、深く味わうことができる」と考えられている。換言すれば、「楽しいからこそ心を無にして没頭でき、上手・下手に関係なく、他者との比較さえもしないで、深く学び続けられる」との思想である。

仕事や勉強、そして日常生活全般においても、普段は義務感や責任感から行なうことが多く、それももちろん大事ではあるが、常に「楽しむ心」を忘れないでいられれば、不思議と他者に対する寛容さや、生きがい感が生じることも自分の体験から学んでいる。楽しむ自分を肯定的に受け入れて初めて、他者に対する信頼感や貢献感が持てるのではないだろうか。

そういえば、以前受講したRSSCのアドラー心理学の授業で、「自分が好きであること、信頼できる仲間がいること、役に立っているとの貢献感を持つことが、幸せになる為の三つの条件である」と学んだことを思い出した。そういうわけで、今年は大いに太極拳や日常生活において、この「楽しむ心」を大切にしながら一年を過ごしていきたいと考えている。(7期生北原)

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