今年から「セカンドステージの哲学」を担当している佐々木一也と申します。専門は哲学で、特に20世紀ドイツのマルティン・ハイデガー(1889-1976)の哲学を学ぶことからこの世界に入り、現在はハンス=ゲオルク・ガダマー(1900-2002)の解釈学(Hermeneutik)の考え方を基本にして、現代の人間を取り巻く状況の意味を考えています。私は文学部文学科文芸・思想専修に所属していますが、大学院は文学研究科比較文明学専攻を担当しています。1983年に創設された比較文明学会でも理事をしています。この学会は現代文明の諸問題を、地球文明的視点に立ち、学際的に、社会に開かれた形で研究することを目指しています。私も哲学の立場から現代市民生活に潜む多様な困難の原因を探り、その意味を見つめる仕事をしています。最近の一番の関心はAIの進歩の中で人間は何を目標に、何を拠り所にして生きたらよいのか、という問題です。「セカンドステージの哲学」では、日常生活に潜んでいる哲学の芽に気づき、それを自覚的に引き受けて考えることが、残された人生をより輝かせ、さらにはその先の未来の世代への確かな引継ぎになることを理解していただくことを目標にしています。そのためには、古代ギリシャで始まった哲学特有の発想法で構成された現代社会と伝統的東アジアの発想法を無自覚に用いて営む個人の生活とのギャップに気づくことが大切です。それを踏まえて、AI技術が社会を変えようとしている21世紀の今をここで生きる意味を考える授業をしています。哲学は一見簡単なことを難しく言う学問のようではありますが、自分の生きる意味に真剣に向き合うことができればおのずと難しくなくなるのです。皆さんとご一緒に、自分の人生が生きてよかったとより強く思えるようになりましょう。