先週の水曜日(12月12日)、大手フィットネスクラブが足立区綾瀬にある東京武道館で開催した「太極拳フェスティバル」なるものに初めて参加した。東京都内の系列店舗から32チームが参加し、総勢400人あまりのクラブ会員が、それぞれの太極拳を集団で演武し、日頃の練習の成果を観客の前で披露するものであった。各チームは、衣装や音楽、さらに套路(太極拳の動き・型)にも独自の工夫をこらし、見応えのあるものであった。表演参加者の年齢層は、60代を中心に70代、50代の順で多いように見受けられた。
会場の東京武道館は、千代田区にある日本武道館とは全く別の建物で、ひし形をモチーフとした前衛的(?)な外観の建物であった。建物を初めて見た瞬間、有名な建築家による斬新なデザインであることは容易に理解できたが、武道やスポーツ関連の建物であるとは想像できなかった。このユニークな外観の建物で太極拳の演武が披露されたのは、全く偶然ではあるが、円のイメージが強い太極拳とひし形の建物との対比が大変興味深かった。
対比と言えば、つい最近まで、大勢の人の前で太極拳の演武を披露することにかなりの抵抗感があり、参加を躊躇ってきたにもかかわらず、今回は、仲間の「十数人が一つのチームを作り集団で演武するから、非常に楽しく気持ちがいい」という誘い文句に乗り、「何事も経験、ものは試し」とばかり参加を決めた自分の態度の変化に驚いた。永年、他者と競ったり比較したりせず、自分自身の健康のために太極拳をひたすら実践(稽古・練習)してきた姿勢になぜか変化が訪れたのであった。
そんな中、実際に演武場となったメインフロアーにチームの一員として立った際、想像以上の大変強いプレッシャーを感じてしまった。大勢の人の視線と多数のカメラを前に、「これは失敗できない!」との気持ちが湧き起こった。全国レベルの武道やスポーツの大会も開催されるほど立派な会場であったことも、緊張感を一層高めた。
いよいよ演武が始まると、仲間の動きに合わせようとすればするほど動きがぎこちないものになり、特に片足立ちになる際には緊張感が増し、一時バランスを崩しそうになった。結果として、普段通りには足が高く上がらず、なめらかな動きもおろそかになり、不満が残るものであった。約4週間にわたり、日曜と木曜の午後や夕方に皆で集まり、かなり真剣に独自の42式総合太極拳を練習したにもかかわらず、個人的には満足のゆくものではなく、力不足を痛感した。同時に太極拳の演武の難しさ、奥の深さを学んだ。
それでも、約6分間の演武が無事おわり、チームで記念撮影場所に移動した時、皆の笑顔が見られ、漸く「ほっと」緊張の糸がほどけた。やがて、周囲のあちこちから「皆の動きが揃っていてとても良かったよ」との声も聞こえてきた。その時、じわじわっと心地よい達成感が自分の中に広がった。
現在、150万人を超えるといわれる日本の太極拳愛好者の多くは、自分も含め中高年が中心で、健康法としての太極拳を実践している。今回の経験を通し学んだことは、健康面だけでなく、演武を披露するという技術面・芸術面での楽しみ方があるということである。今後は、2024年のパリオリンピックで太極拳がオリンピック種目に採用されると聴いているので、競技や表演としての太極拳(武術太極拳)が多くの人に認知され、愛好されると考えられる。健康太極拳にしろ、武術太極拳にしろ、より多くの人に自分に合った太極拳を無理のない方法で楽しんでもらいたいと個人的には願っている。(7期生 北原)
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