特別展『ターナー 風景の詩(うた)』鑑賞記 名画(美術)鑑賞友の会

鑑賞日 2018年6月22日
会場  東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
参加者 9名

イギリスを代表する風景画の巨匠、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775~1851)の展覧会。穏やかな田園風景、嵐の海、聳(そびえ)立つ山岳など、自然の様々な表情を優れた技法で表現したターナー。独特の光や空気感に包まれたターナーの風景画は、フランスの印象派をはじめ、多くの芸術家に影響をあたえた。本展覧会はターナーの水彩、油彩、版画作品約120点を、「地誌的風景画」「海景‐海洋国家に生きて」「イタリア‐古代への憧れ」「山岳‐あらたな景観美をさがして」という4つの章でご紹介し、その核心と魅力に迫ります。
(損保ジャパン日本興亜美術館HPより引用)

私のターナー展鑑賞は3回目
 私がジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの展覧会に行ったのは3回目である。1回目はもう30年ほど前になるが、もみくちゃにされながら見た記憶がある。その頃からターナーの絵は人気があったようだが、なぜ福島県の田舎からわざわざ上野まで見に行ったのか、その動機は覚えていない。でも「ターナーイエロー」とでもいうのだろうか、ほの暗さをはらんだ黄色に心惹かれたのは覚えている。2回目は、5年前の都立美術館らしい。見に行ったことしか記憶していないが、ターナーらしい船の絵があったのだけは覚えている。

エッチングに感動
 そして今回は、多くのエッチングに心を奪われた。何しろ細かい。1cmの間に何本の線が書かれているのだろうかと、眼鏡をはずして真剣に見入ってしまった。水彩画と同じ構図のエッチングは、彩色がない分、明暗を線の種類や多寡で表現しており、線だけで構成されているとは思えないほどの表現力を持っていた。それらの多くを福島県郡山市美術館が所有していることにも驚いた。

空と遠景・山の青
 今回も「ターナーイエロー」に見入ったが、新鮮な驚きだったのは、青色の使い方だった。空と遠景・山の青~水色に心惹かれた。荒れて濁った海は、長く続く英仏戦争を比喩していたのかもしれない。

 

 

 

さまざまな衣装の人物
 他に印象的だったのは、さまざまな人物が描かれていたことだ。当時の生活を窺い知ることが出来る、いろいろな国の人種、衣装の人物が描かれていた。そしてそれらの人々の存在が、絵に動きを与えているように感じられた。
 今回のターナー展には、「イギリス風景画の巨匠」「風景の詩」という副題がついているが、彼の描く風景を効果的にしていたのは、まさにこれらの人々だったのではないだろうか。

 

 

 会場は新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館だったが、最後にその収蔵作品であるゴッホのひまわりを見ながら、10代からパトロンが付き、描けば売れたというターナーと、生前1枚しか売れなかったゴッホの社会的・経済的対比が、とても悲しく思えたことを付け加えたい。
(國田千以子 記)

※画像はすべて損保ジャパン日本興亜美術館HPより引用