桜がいつ咲くとか咲いたとか、春になるとなにかと桜の話題で持ち切りだ。日本中に春を告げながら「さくら前線」が北上している。今年は例年より開花が早く、お花見の時期を逸してしまった人もいるのでは。
今年(2018年)、100年ぶりにサクラの新種(原種)が見つかったという報道があった。サクラの種類は原種では10種類くらいらしいが、変種や交配種などの園芸種を含めると600種以上あるらしい。その中で、現在日本で植えられているサクラの約8割はソメイヨシノという種類。これはエドヒガンザクラとオオシマザクラの交配種で、それを接木や挿木で増やしていったもので、すべて同じ遺伝子を持つクローンらしい。だから同条件ではほぼ同じ咲き方をする。このソメイヨシノは全国的に広まり、数も圧倒的に多いので開花や満開の指標に使うのに適している。が、悪性の病虫害などが発生したら、日本の8割のサクラが消滅する?という心配はないのだろうか。
ところで、この交配種であるソメイヨシノの発祥は、江戸時代末期の植木職人伊兵衛という人が『染井』という地で作ったらしい。奈良吉野桜と混同を避けるため、「染井で出来た吉野の山桜」という意味か、『染井吉野』と名付けられた。染井という土地は、池波正太郎の鬼平犯科帳にも出てくる、江戸郊外の農村地帯、巣鴨村や駒込村などの地域。万延元年(1860年)に来日したイギリスの植物学者ロバート・フォーチュンはこの植木職人の集まるこのあたりを「ここ染井では3~4エーカー(約4000坪)の土地で売り物の植物を栽培している。こんなのは世界でも見たことがない」と驚嘆して書いている。
ここは現在東京都豊島区駒込付近。「染井」という地名表示はないが、今も染井通り、染井橋、染井銀座などの名称は使われている。中でも「東京都立染井霊園」は古い墓地で、有名人のお墓も多くある。ここにはその名に恥じないほどのソメイヨシノが咲き誇り、墓所のせいか観光客はほとんどいないので、静かですばらしい桜を堪能できる。ぜひ一度訪れて見ては。
ソメイヨシノの寿命は50年~60年くらいという説があるようだが、きちんと手入れをすれば何年でも咲き続けるという樹木医の話があった。路地に植えっぱなしで、しかも人工的な悪影響を受けていないか。先日の新聞に、枯死寸前になった「樽見の大桜」(兵庫県樽見)という樹齢千年の天然記念物の桜が、樹木医らの努力で今は毎年満開の花をつけるまでに回復したという記事があった。この「樽見の大桜」は地元では『仙桜』と呼ばれており、種はエドヒガンザクラとのこと。なんとソメイヨシノの親にあたるのか。
ところで「昔に比べ最近の桜は白っぽくなった」とお思いの方はいないだろうか。思わなければ結構だがそういう意見に対して解説があった。
①開花から満開までの見る時期に影響される。
・開花時は赤っぽい、満開時は白っぽい、花びらがなくなると赤く見える。
②老木になると白っぽくなる。(普通は若い樹と老木は混在しているはず)
③中高年者は、白内障が進むと霞がかかっているように見える。
以上、「最近の桜が白っぽくなった」わけではなく、おもに見る側に原因があるようだ。 特に、『私達』中高年は決め付けて見るせいで、そう見えるのか。 現に若い人はそういう印象は持たないようだし、実際、昔と比べようがない。
昔と比べても比べなくても、春は桜が咲き誇り、心がときめき騒ぐほうが、やはり嬉しい。 (7期生 佐野英二)
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