ウィメンズクラブ3月定例会 「先達(矢島楫子)に学ぶ」
1活動日 2018年3月2日(金)14時半~17時
2場 所 セントポールズ会館「すずかけ」
4テーマ 「先達(矢島楫子)に学ぶ」~挫折からの再出発~
人は誰でも長い人生の中で、思いがけない失敗や挫折に遭遇してしまうことがあるのではないだろうか。今回取り上げた矢島楫子は、40代で大失敗したものの、理不尽に踏みにじられた前半生を土台に、後半の人生は強い意思を持って生き抜き、女性の性の尊厳、更に男女平等のために社会風習を変えようと日本の女性の地位向上を目指して活動した人である。偽善者との批判もあるようだが、“挫折しようとも強い志を持ち続ければ新たな道を開くことができる”と身を持って教えてくれた先達(教育者、社会運動家)と言える。
◆教育者
小学校教員の免許をとり 教員として歩み始めた楫子であったが、道半ばで不義の子を出産、自分自身の人間としての弱さを思い知らされたのである。その後女学校の教師をしていた時に出会った米国の宣教師により神の愛を知り、神を感じて「してはならないことはしない。すべきことは断固としてする。そうした人間になるような教育を自分達の学校ではしたい」と、遂に明治23年女子学院の初代院長となった。キリスト教主義を基盤とする女子学院は細かな校則のないことで知られているが、それは楫子の「あなたがたは聖書を持っています。だから自分で自分を治めなさい」の言葉で今に続いている。
◆社会事業家
楫子は日本キリスト教婦人 矯風会を設立して、禁酒運動、廃娼運動にも命がけで闘った。そして女性の人権など無きに等しく妻妾同居のならわしがあった当時の社会において、一夫一婦制を訴えるために白無垢の姿で懐剣を懐に、建白書を元老院に届けに行ったという逸話も残っている。一方、日清戦争、日露戦争、世界第一次大戦等で多くの母たち、妻たちのその柱を失った悲惨さを見つめてきた。「もう戦争はあってはならない」という思いが溢れ、晩年は世界平和運動にも視野を広げた。1921年(大正10年)、89才でアメリカに渡り、「講演会」の場で世界平和のために祈りを捧げたのである。目も見えにくくなりこの四度目の海外行きは皆に反対されたが、楫子は「天国は日本からでも、アメリカからでも、距離は同じでしょう」と気にも留めなかったという。明治から大正にかけて命がけの波乱に満ちた人生を送った矢島楫子は92才で永眠(多磨霊園に眠る)
◆感想・学び
(1)江戸時代の終わりに生を受け、極端な男性社会の中で自らの意思を貫き、ひいては世界平和にまで視野を広げた矢島楫子に感動した。
(2)兄の看病のために長崎から船で東京に向かった矢島かつは、どの船にも楫があり、どんなに大きな船でも小さな楫の示す方向に動くことから、自らの名を楫子と変えたという。不幸な結婚から自分自身の人生は自ら切り拓いていくことを決心した楫子の強い意思を感じた。
(3)楫子がキリスト教に出会えなかったら、どんな人生を送ったのだろう。神に出会えたことで人生をやり直すことができたのではないか。
(4)楫子は確かに自分自身で道を拓いてきたが、名乗れないわが子や婚家に置いてきたわが子、又長い間姉に預けてしまったわが子たちへの思いはどうだったのだろう!女学校の生徒たちの教育には力を注いでいたが・・・・実の子供たちは、きっと立派な母でなくてもただ抱きしめてくれる母を望んでいたのかもしれないと思うと、正直勝手だなとも感じてしまう。
(5)女性の地位が著しく低かった当時、楫子が意志的に活動できた背景には、矢嶋家の四人の姉たちの存在がある。その姉妹を育てた母は聡明な人で姉妹の教育にも大変熱心だったようだ。そのことが後の楫子の活躍に繋がったと思うと、やはり母の先見の明を思わないではいられない。
◆参考図書『われ弱ければ 矢島楫子評伝』三浦綾子著(小学館文庫)
矢島楫子伝を著した三浦綾子の思い「単なる伝記の抄出のようでいて伝記でもない。小説に似て小説でもない。評伝のようであるがそれとも違う。ただ私は、矢島楫子なる人物を伝えたかったのだ。著者は「楫子を伝えたい一心で」このような伝記を書いたと述べている。
◆参考DVD『郷土の偉人シリーズ 矢島楫子とその姉たち~女性の扉を開けた信念の人~』
2009年にテレビ熊本開局40周年記念で放映されたドラマ(放映時間75分) 今回、㈱テレビ熊本東京支社のご好意で、DVDをお借りすることができ、皆で視聴した。
(記:小杉)
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