平昌冬季オリンピックも終盤に入ったが、厳冬期になると思い出すことがある。岩洞湖のワカサギ釣りだ。盛岡市藪川、北上川の上流丹藤川のダム湖。マイナス35度の記録が残る、本州で最も寒いという。

55歳の時、岩手県一関市に赴任、直後、割烹料理屋で隣合わせた男と意気投合。釣りキチだった。特にワカサギ釣りは、地元でも有名な名人だった。前泊した彼の家を朝4時に出る。東北自動車道を北上、盛岡ICで降りる。一般道を35キロ、スリル満点のアイスバーンを登り、標高700メートルの湖畔に到着。辺りは真っ暗、目指す目標地点まで、湖上をひたすらソリを引く。釣り穴をあけ、テントを貼り、明け方釣り開始。氷点下15度、6~7時間が勝負だ。釣った後は湖畔の食堂で、熱々の薮川そばを食べる。冷たい体が温まる。格別に旨い。

釣果を仲間の割烹料理屋に持ち込む。手早く串焼・天婦羅にしてくれる。しかしやはり鍋が一番。上質なワカサギだからこそできる。京都で修業したマスターの出汁で、味も引き立つ。蕎麦屋のドロドロした乳白色のそば湯で、焼酎を飲む。これぞそば湯だ。釣ったワカサギは、お酒も進む。至福のひと時だ。南国生まれ、生涯一回経験したいと挑んだ氷上釣り、3年続いた。

何故か東北が好き。特に青森が好き。「冬は青森に行こう」と、今年で5年目になった。記録的な大雪の東京を後に北上、3時間半。青森は吹雪いていた。駅前のホテル近く、看板のねぶたが迎えてくれる。夫婦で営む、小さな店。「旬の刺身を味わうちょっと盛り」「ホタテの貝焼き味噌」が人気。地酒が合う。今年も青森に来たなと思う瞬間。女将が「うちの貝焼き味噌、大きすぎてごめんなさい」と謝る。鍋代わりの貝殻が20センチはあろうか。具沢山すぎて、他の料理が食べられずにごめんという意味だ。大満足。

翌日は五能線「リゾート白神」で、「津軽弁の語り部」と「津軽三味線の生演奏」を聴くはずだった。しかし今年は急用でドタキャン。冬の日本海絶景コースは、来年に持ち越しだ。

何故青森が好きなのかと自問する。「静は動を知り、寒さはあたたかさを感じるため」というフレーズにうなずく。日本の原風景が残る。実家に帰ったように迎えてくれる。釣り名人と酒を酌み交わすこともできた。来冬も青森に行こう。
来月は桜だ、花見だ。思い立ったらすぐ行動だ。(7期生 榎本)

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