名画(美術)鑑賞友の会 『すみだ北斎美術館』鑑賞記

日時 2017年8月11日(金) 11:30~13:00
会場 「すみだ北斎美術館」
企画展 『北斎×富士 ~富嶽三十六景 富嶽百景 揃いぶみ~』
参加人数 12人(7期生 8期生)

7月の葛飾北斎事前学習会(7/24)を踏まえ、開館記念展Ⅳを鑑賞した。

美術館建物
 まず鑑賞すべきは、美術館建物である。羊羹を切って、傾けて並べたような、表面が金属的な建造が、公園の一角にある。建物は印象的だが、公園の方がずっと広い。
コンセプトは、公園や地域との一体感、傾いたスリット(すき間)はどこからでも入れるアプローチということらしい。
美術館のマークは、『山下白雨』の富士の雷の図をデザインしている

 

『北斎×富士 ~富嶽三十六景 富嶽百景 揃いぶみ~』
 さて本題の企画展に話を移そう。
 題名の通り、富嶽三十六景46点、富嶽百景86点、ほかに北斎漫画が26点と揃いぶみ展示されている。作品は隙間なくずらっと掛けられ、惜しげもない。概ね見たことがあるような気もするが、じっくり見るのは初めてだ。作品を振り返るには、チケット売り場でもらう「富嶽三十六景」図録(版行版)が役に立つ。「錦絵」(色摺木版画)で、何度かに分けて出版されており、落款、輪郭線の色に違い(藍色、墨色)がある、と記されている。

『日本風土記』的な絵の要素
 愈々感想に入る。
錦絵と摺物の違いも知らなかった。摺物は藍色の単色摺りだが、色がついているものと勘違いして見ていた。各作品には、富士の他に、人物、海(もしくは川)、働く人がほとんどに描かれている。風景と共に時代の風俗、暮らしぶり、仕事がリアルに描き込まれ、さながらNHKの「日本風土記」的である。
『尾州富士見原』には桶職人、『武州千住』、『甲州犬目峠』には馬で荷を運ぶ人、『武州玉川』、『武揚佃島』には舟で荷を運ぶ人、他にも大工、漁師、瓦葺き、渡し、海草取り、材木屋とさまざまな職業が記録されている。

 

ライフ誌 世界の100人
 90年生きて、93回引越し、そのほとんどを美術館近くの住所で暮らしている。
変わり者とも言えるが、ゴッホ、モネにも影響を与え、作曲家ドビュッシーは『神奈川沖浪裏』を見て『海』を作曲し、画家アンリ・リヴィェールは『エッフェル塔三十六景』を描いている。
ライフ誌の選ぶ「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」に選ばれた唯一の日本人である。

富士の三角形との対比
 渡邉会長からは、富士の三角形の対比として、波形や、山、屋根、荷物、材木、漁師の網を引く縄などに注目すること、との教示があったが、なるほど必ずと言っていいほど構図に三角形の対比が組み込まれている。桶の丸形から富士を覗く構図も面白い。『尾州富士見原』
どの絵も完成された構図であり、また日本風土記的である。
みなさまにも、是非足を運んでご鑑賞いただきたい。
(小池 記)

  

この記事の投稿者

八期生