夏の終わりが一向に見えてこない9月半ば、千石ゼミのメンバー5名は広島駅に降り立った。今回のゼミ旅行は広島を起点とし、山陽道を沿うように陸路にて唐戸へ。唐戸から関門海峡を渡り門司港へと至る行程である。まずは食事。広島と言えばお好み焼き。早速駅ナカの店に行ってみれば長蛇の列。駅より少し離れた店にてお好み焼きを楽しみ、旅の始まりとした。

 今年8月で終戦から80年を迎えた。これを機に原子爆弾により甚大なる被害を受けた広島の街を訪れ、改めて戦災の記憶を確かめ、その後の復興の姿を体験することとした。門司港へは貿易で栄えた往時の繁栄と関門海峡を舞台とした歴史を探るため訪ねることとした。

 広島の街は夜明け前から激しい雷雨となり、降りやまぬ雨は原爆死没者の無念の涙かと。広島平和記念資料館、原爆死没者慰霊碑を訪ね、原子爆弾による惨禍を見つめなおし、数多の原爆犠牲者に祈りを捧げた。メモを片手に見学する小学生たち。その真剣な表情にこちらも思わず身を引き締める。広島駅は折しもこの8月に駅周辺の大改造が完了し、モダンなデザインとなった路面電車の発着が駅2階に直結するなど、広島の玄関口が新しく生まれ変わった。

 唐戸から門司港までは関門連絡船にて5分間の船旅である。門司港の船着き場に立てば、明治から昭和に至るレトロ感漂う港町が我らを迎える。旧大阪商船ビル、旧門司税関、大連友好記念館など赤レンガの歴史的建物が街並みを彩り、港町として栄えた門司港の歴史を今に伝えている。鹿児島本線の終着駅となる門司港駅。その駅舎は大正3年建設時そのままの立派な佇まいを見せている。現役の駅舎で重要文化財に指定されているのはここ門司港駅と東京駅だけである。

 関門海峡を行き交う大小の船を眺めながら、壇之浦の海に沈んだ幼き安徳天皇を忍び、巌流島であの二人はいかに戦ったのかと思いめぐらし、長い歴史と港町の繁栄に思いを馳せ、門司港を旅の終わりとした。

千石ゼミ 佐藤勇一

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編集チーム 十六期生