富士山に登ってみて思ったこと
堀 耕治(RSSC本科ゼミ担当教授)
この夏、富士山に登ってきました。自分なりの合理的な理由があって、単独・日帰りという登り方を選びました。ことわっておきますが、悪名高い「弾丸登山」と日帰り登山は別物です(興味のある方はお調べください)。しかし、無計画な富士登山を戒める報道を目にすることが多い昨今、万一途中で体力を使い果たしたり高山病になったりして救援でも求めようものなら、「高齢者、無謀な富士登山」などと、メディアの格好の餌食になるかもしれません。なので十分時間をかけて、体力づくりをはじめとして、もろもろの準備はしっかり行いました。意外にも準備作業自体、私はけっこう楽しむことができたのですが、唯一手こずったのは妻の説得でした。話が長くなるので、これについては詳細を省略。
思うのですが、富士山に登ったからといって、それを境に何かが現実的に変わるわけではない。でも、登った人と登らない人とでは、一つ確実に違うことがあると思います。それは富士山の姿をたまに見かけたときに抱くある種の「思い」です。あの頂上に自分は立ったんだという確実な「思い」は登った人にしかない。「それがどうした」と言われてしまうかもしれません。でも、鼻で笑われるのを覚悟して書きますが、この「思い」はたぶん・・・たぶん、ですよ・・・アームストロング船長が夜空に月を見るたびに生涯彼の脳裏に去来したであろう想念に近いものがあるのではないか。「あそこに俺は行ったことがある」。たったそれだけの、しかしものすごく確かな手触りをもった「思い」です。
アームストロングとは違って、私は来年また「あそこ」へ行くかもしれません。時間の関係で剣ヶ峰と呼ばれる最高標高地点には行けなかったのです。さて今度はどうやって妻を説得しようかな・・・
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