「カウンセリングでは構成主義と名付けている少し哲学的なテーマを静かな人間ドラマとして見せてくれる一作」という友人からのお勧めメールにも背中を押され、3月23日、日米合作の異色ハリウッド映画『レンタルファミリー』見てきました。

舞台は日本。主人公フィリップは、「レンタルファミリー」と呼ばれる、誰かの“家族”の一員を演じるという特殊な仕事に出会い、予期せぬ人生の一端を体験し始めます。他者の代役を務めることは、偽りの自分を演じることに他なりませんが、その過程で生まれた感情は、やがて本来の自分自身のものへと変化していきます。偽りの鎧を脱ぎ捨て、本当の自分を見出していく人間再生の物語です。                            

鑑賞後の第一印象は、「温かみのある佳作だけれど、宣伝文句が強調するほどの傑作とまではいえない」というものでした。各エピソードは概ね予定調和的に展開し、どこかで見たことのあるような印象を受ける場面もありましたが、一方で随所に見どころや考えさせられるシーンが散りばめられ、十分に推薦できる作品です。

●主人公を「東京に住む巨躯の外国人・売れない俳優」とした設定は、物語の主題やメッセージをより説得力あるものにしています。日本人であれば無意識のうちに受け入れてしまいがちな「世間の常識」や「家族観」への違和感も、外国人の視点を通して描かれることで、観客により自然かつ率直に伝わってきます。さらに、主人公自身もまた異文化からの孤独な来訪者という立場であり、その設定が依頼者たちの心の隙間と重なり、作品全体のテーマ性を強化しています。

●また、主人公の「心の空虚さや疎外感」は、電車の座席で身を縮める姿や群衆の中での通勤風景、そして自宅アパートの狭さと大柄な体のアンバランスなど、映像表現によって見事に描写されています。薄暗い部屋で缶ビールを開け、窓越しに隣の集合住宅の家族たちを眺める姿には、孤独感が静かに滲み出ています。

代役から本当の自分へと至る決定的な転換点も、ドラマティックに描かれています。家族面談の父親役のエピソードでは、母親の型通りの受け答えを押しとどめ、本心からの愛情が自ずと発露し、代役の境界を越えていきます。さらに、老俳優の取材者役では、心が通じ合ったものだけが持つ信頼関係を感じ取り、素=本来の自分として迷いない行動に繋げていきます。

●全体として、予定調和的な部分はあるものの、異文化的視座を活かした主人公の造形や、偽りから本当の自分へと至るプロセスなど、心に残るシーンが多く見受けられる作品です。鑑賞後には温かな余韻を残してくれる映画だといえるでしょう。

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(おまけ)外国映画は字幕?吹替え?、海外では?
各国での外国映画の公開形式は、言語圏の大きさやその国の歴史的背景、海外文化への関心の質量によって異なる。
大きな言語圏を持つ国では吹替えの制作コストを回収できる市場規模を持っているから、吹替えが可能であろうし(ドイツやフランスは、「吹替え」が多いという)、旧宗主国につながるアフリカ諸国などはそれに相乗りが一番経済合理性に合っているだろう。ロシアなどのように「ボイスオーバー」という方式もあるという。 その国の識字率などの大きな判断材料か。昨今では、「海外文化への関心、作品の描くオリジナリティー尊重」のニーズから「オリジナル言語+字幕」が流れのようだ。外国映画の公開形式からもいろいろな国の違い・状況が見えてくる、面白いことだ。(7期生 石倉 寛)

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